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[標本番号:No.638 採集日:2009/05/03 採集地:栃木県、那須塩原市] [和名:ヒラハミズゴケ 学名:Sphagnum subsecundum var. platyphyllum] | |||||||||||||
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栃木県那須塩原市の小湿地で(alt 1,250m)、低層湿原の水中に緩い群生をしていたミズゴケを観察した(a, b)。茎は白緑色〜明緑色で、長さ6〜10cm、やや硬い感じで、ほとんどが水に浸っていた。下垂枝は短く、開出枝と下垂枝の未分化な枝も多く、開出枝だけしかない枝群がかなりある(f)。小形で枝が非常にまばらな細い個体が所々に混じっている(aa〜ad)。 枝を外すと、深く凹んだ楕円形の茎葉がよく目立つ(g, h)。茎の表皮細胞には螺旋状の肥厚も孔もない(i)。茎の横断面で表皮細胞は1〜2層、木質部との境界は明瞭。数本の茎から20ヵ所ほど切り出してみると、大半の表皮細胞は1〜2層だが、3層のものが3〜4個あった(j)。枝の表皮細胞には、比較的首の長いレトルト細胞が高頻度にある(k)。枝の横断面には、大形のレトルト細胞が1〜3列ほどある(l)。 |
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茎葉と枝葉とを並べてみる(m)と、茎葉が意外と大きく、多くは楕円形〜広卵形をしている(n)。茎葉は深く凹み、長さ1.6〜2.0mm、葉縁には数細胞からなる舷があり、葉頂から基部までほぼ同じ幅で続き、基部で舷が広がることはない。茎葉の葉身細胞には多数の糸があり、背面上部には透明細胞の輪郭部に小さな孔が多数ある。中央部から基部では輪郭部の孔は少なくなる(q)。茎葉の横断面で葉緑細胞は背腹両面に、ほぼ同じ幅で開いている(r)。 枝葉は長さ1.5〜2.2mm、広卵状披針形で、深く凹み、縁には2〜3細胞列からなる舷があり、背面の透明細胞の縁には、縁の厚い小さな孔が断続的にある。腹面上部には孔は少ないが、中央部には小さな孔がみられる(u〜x)。枝葉背面上部の透明細胞は、茎葉背面上部の透明細胞の構造と、糸やら孔の様子がよく似ている。 |
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枝葉の横断面で、葉緑細胞は背腹両面に広がり、どちらに広く開いているとは言い難い(y, z)。上で少し触れたが、枝が疎らで細く短い枝がかなりの頻度で含まれている。大多数の茎と比較すると、かなり小さい(aa)。中には茎と茎葉だけで、枝のほとんどないものがあった。これらの茎葉と枝葉の形態や葉身細胞の様子は、上述した普通サイズの茎や枝の葉となんら変わりない。また、開出枝と下垂枝の葉とには有意な差異がないため、検鏡写真は開出枝の葉で代表した。
茎や枝の表皮細胞に螺旋状肥厚がないので、ミズゴケ節 Sect. Sphagnum ではない。また枝葉の横断面が背腹両面にでているので、キダチミズゴケ節 Sect. Rigida でもなく、キレハミズゴケ節 Sect. Insulosa でもない。茎葉は大形だが、舷は基部で広がらないのでウロコミズゴケ節 Sect. Squarrosa でもない。枝葉の透明細胞の背側に多数の子孔が接合面にそってならぶので、スギバミズゴケ節 Sect. Acutifolia でもなく、ハリミズゴケ節 Sect. Cuspidata でもない。つまり、本標本はユガミミズゴケ節 Sect. Subsecunda のミズゴケということになる。 |
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