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[標本番号:No.633 採集日:2009/05/03 採集地:栃木県、宇都宮市] [和名:アラエノヒツジゴケ 学名:Brachythecium reflexum] | |||||||||||||||||||
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今月初めゴールデンウイークに宇都宮市の公園(alt 180m)で、脆い岸壁についていた蘚類を採集した(a, b)。乾燥すると葉が茎に密着し、湿ると葉を展開させる。茎ははい、短い枝を出し、枝は不規則に分枝する(c〜f)。 茎葉は広卵形〜三角形で基部のやや上がもっとも幅広く、長さ0.7〜1.2mm、急に細くなって葉先は長く尖る。葉には縦しわはほとんど無く、葉先付近には微細な歯があり、透明尖をもつ葉もある。葉先が反り返ることはない。中肋は強く葉頂に達する(g〜i)。茎葉の葉身細胞は長い六角形〜楕円形で、葉の中央部では長さ30〜55μm、幅6〜8μm、薄膜で平滑。翼部では膨らみをもった方形の細胞が中肋付近にまで達し、茎に下延する様子はない(j〜l)。 枝葉は卵形で、長さ0.5〜1.2mm、葉先は急に細くなって尖り、上半部の縁には微細な鋸歯がある。中肋は葉頂に達し、葉身細胞の形や大きさ、翼部に於ける状態は、茎葉のそれとほぼ同様(m〜q)。枝葉の横断面で中肋にはステライドやガイドセルはない(r)。茎の横断面にはよわい中心束があり、表皮には小さな細胞がみられる(s) |
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朔柄は赤褐色で、長さ10〜12mm、卵形の朔をつける(t)。朔柄の上部には微細な乳頭がみられるが、朔柄の下部では不明瞭(v)。朔はやや傾いてつき、非相称で、短く尖った蓋をもち、朔歯は二重でそれぞれ16枚、内朔歯と外朔歯の長さはほぼ同様(u〜x)。朔の基部付近には気孔がある(y)。帽をつけた胞子体は残っていなかった。 内朔歯と外朔歯とを分離してみた(z)。外朔歯の基部には密に横条があり、上部表面は微細な乳頭におおわれる(aa, ab)。内朔歯の基礎膜は高く、間毛と歯突起がよく発達している。間毛と歯突起の表面も微細な乳頭におおわれる(ac, ad)。なお、朔や朔柄の横断面、胞子の件、苞葉などについては画像も記述も省略した。
アオギヌゴケ科 Brachytheciaceae の蘚類だと思う。平凡社図鑑の検索表をたどるとアオギヌゴケ属 Brachythecium に落ちる。種への検索表をたどると、アオギヌゴケ B. populeum とアラエノヒツジゴケ B. reflexum の二つが候補に残る。アオギヌゴケは変異に富むということで、その可能性も否定できないが、朔の形が短い卵形であるとされる。また、茎葉の形も本標本とは異なるようだ。 |
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