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[標本番号:No.765   採集日:2009/10/01   採集地:群馬県、水上町]
[和名:イトササバゴケ   学名:Calliergon stramineum]
 
2009年11月15日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a〜c) 採取標本、(d) 乾燥時、(e) 湿時、(f) 葉近影、(g, h) 葉、(i) 葉身細胞、(j) 葉頂部、(k) 葉翼部、(l) 茎と葉の横断面

 群馬県上州武尊で採取したコサンカクミズゴケ(標本No.764)に絡みついていたコケをより分けて集めてみると数十本になった。そこで処分するのはやめて観察してみた。枝分かれはほとんどなく、ルーペでみると葉の先端が円頭で中肋が葉頂には達していない。どうやらササバゴケ属 Calliergon の蘚類のようだ。多分ミズゴケ脇に群生していたのだろうが、気づかなかった。
 検鏡しているうちに、先日観察覚書で取り上げたイトササバゴケ C. stramineum (No.748)と同じらしいことに気づいた。葉の長さはほぼ1.2mm前後で、No.748と比べてかなり小降りだった。葉身細胞の長さも、葉の中央部で35〜60μmでやはりNo.748より短い(i)。また、葉先に仮根をつけた葉は比較的少なかった。葉の翼は大型透明の細胞からなり、左右両端は茎に明瞭に下延している(h, k)。茎の横断面には中心束があり、表皮は小形厚膜の細胞からなる。葉の横断面で中肋にはステライドもガイドセルもない(l)。

 イトササバゴケは先にていねいに観察しているので、今回は覚書にアップするのはやめようと思っていたが、採取地が全く異なり、標本として残すことにもしたので、ここにメモとして残しておくことにした。ササバゴケとは奇妙な名だと思っていたが、ルーペで茎をよく見ると、青笹や青竹を連想させられ(e, f)、何となく納得した。