HOME | 観察覚書:INDEX | back |
[標本番号:No.798 採集日:2009/12/02 採集地:埼玉県、越生町] [和名:ホソエヘチマゴケ 学名:Pohlia proligera] | |||||||||||||
|
|||||||||||||
奥武蔵の小沢に沿った林道で、 |
|||||||||||||
|
|
||||||||||||
葉身細胞は長矩形〜線形で、長さ70〜110μm、幅8〜10μm、薄壁で平滑(j)。頂部では短く、翼部はほとんど分化しない(k)。葉の横断面で背側にステライドがあり、ガイドセルがある(l)。茎の横断面で、中心柱があり、表皮は厚壁で小さな細胞からなる(m, n)。 上部の葉の葉腋に多くの糸状の無性芽をつける。茎上部に葉がなくガマの穂状に全体を無性芽に厚く被われたものが目立つ(f)。無性芽は黄緑色で、捻れた糸状であり、上端は1〜4個の尖った歯状になっている(q)。なお、3%KOHに浸すと葉や無性芽は明黄褐色になる(q, r)。 ハリガネゴケ科 Bryaceae ヘチマゴケ属 Pohlia の蘚類のようだ。平凡社図鑑の検索表をたどると、ホソエヘチマゴケ P. proligera に落ちる。種の解説をよむと観察結果とほぼ符合する。
[修正と補足:2009.12.05]
そこであらためて、無性芽を詳細に検討してみることにした。あわせてケヘチマゴケと同定した標本No.513の無性芽もあらためて見直した。
|
|||||||||||||
|
|
||||||||||||
二つの標本を比較すると、無性芽の付き方がまるで違う。No.798は無性芽が茎の上半一帯に溢れるようについている(s)。それに対してNo.513では葉腋に密集しているが目立ちにくい(s')。無性芽については、No.798ではすべてが糸状であり(t, u)、No.513では大部分がおしぼり状であって長めの倒卵形のものもいくつかみられた(t', u')。 無性芽頂端の葉原基をみると、No.798では大部分が1〜2個であり、3〜4個のものはまれだった(v, w)。先の記述で「上端は1〜4個の尖った歯状になっている」というのは訂正する必要がある。先に掲載した画像(q)は例外的なものだったといえる。これに対して、標本No.513の葉原基は、3〜5個あって、1〜2個というものは稀だった(v', w')。 識者の方からも指摘されたが、本文1行目に「小枝の表面を被っていた」と記したのは全くの誤りで、「岩壁に着生していた」と書くつもりが、別の蘚類のことを誤って記していた。この部分は、取消線を加えて修正しておいた。コメントと誤りのご指摘ありがとうございました。 |
|||||||||||||