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[標本番号:No.0894   採集日:2010/05/01   採集地:岡山県、高梁市]
[和名:クシノハゴケ   学名:Ctenidium capillifolium]
 
2010年5月8日()
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
(j)
(k)
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(l)
(l)
(a, b) 採集標本、(c) 乾燥時、(d) 湿時、(e, f) 枝と葉、(g, h) 茎葉、(i) 茎葉上半、(j) 茎葉下半、(k) 茎葉の葉身細胞、(l) 茎葉の翼部

 岡山県高梁市の沢沿いの石灰岩壁で採取した光沢のある蘚類を観察した(alt 230m)。残念ながらカメラを持っていなかったので、生態写真を撮ることができなかった。また、採取したサンプル量が少なかったこともあり、茎はごくわずかしかなく茎葉の大部分が崩れていた。したがって、ここに「茎葉」として掲載した葉(g〜m)は、限りなく枝に近いものかもしれない。
 植物体には強い光沢があり、不規則羽状に分枝し、茎は石灰岩の壁を匍い、長さ3〜10mmの枝を出し、枝には葉がやや扁平気味に密集する。乾燥していても湿っていても姿はほとんど変わらず、葉は斜めに開出する。茎葉も枝葉もやや凹み、乾燥すると縦しわがでやすい。
 茎葉は長さ1.8〜2.2m、卵形〜三角形の下部からやや急に細くなって針状に伸び、多くは葉先が捻れる。茎葉の縁には全周にわたって歯があり、しばしば上半部が背側に反り返る。茎葉の中肋は二本で短く弱い。葉身細胞は線形で、長さ25〜55μm、幅3〜6μm、膜はやや厚く平滑。葉基部近くでは葉身細胞は幅広となり、翼部には矩形の細胞が並ぶが、翼部の発達は悪い。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(m) 茎葉先端、(n, o) 枝葉、(p) 枝葉の葉身細胞、(q) 枝葉の翼部、(r) 枝葉先端、(s, t) 枝葉の横断面、(u) 枝の横断面、(v) 茎の横断面、(w) 毛葉

 枝葉は大きさの幅が広く、長さ1〜1.8mm、卵形の下部から長く伸び、鋭頭で、全周にわたって歯がある。葉身細胞や翼部の様子は茎葉と同じ。茎や枝の横断面には中心束があり、表皮細胞は小形で厚膜。偽毛葉は披針形〜小葉状。

 岩を匍う茎をていねいに外して採取しなかったことが悔やまれる。朔をつけた個体はみあたらなかった。採取した標本では、茎の大部分が褐色で葉を落としていた。枝に近い部分にわずかに残った茎葉も多くが崩れていた。茎葉、枝葉ともに葉先がよじれたものが多かった。葉はいずれも、カバーグラスの重みで基部が簡単に破れてしまった。
 ハイゴケ科 Hypnaceae の蘚類だろう。保育社図鑑の検索表からはクシノハゴケ属 Ctenidium が候補にあがる。属から種への検索表からはクシノハゴケ C. capillifolium に落ちる。平凡社図鑑でハイゴケ科から検索をたどっても同じ種に落ちる。しかし、本標本では茎葉と枝葉の形はさほど変わらず、大きさだけが異なる。 ただ、茎葉の形が図鑑の記述と異なり、このままクシノハゴケとするには躊躇されるので、とりあえずクシノハゴケ属とした。先にクシノハゴケと同定した標本No.851と比較してみても葉形がかなり異なる。これまた判断ミスだろうか。

[修正と補足:2010.05.08]
 複数の識者の方々からコメントをいただいた。葉の形には変異が大きいらしく、これはクシノハゴケ C. capillifolium としてよさそうだ。クシノハゴケ属からクシノハゴケと修正した。ご指摘とご教示ありがとうございました。