HOME | 観察覚書:INDEX | back |
[標本番号:No.0962 採集日:2010/06/06 採集地:栃木県、日光市] [和名:スギバミズゴケ 学名:Sphagnum capillifolium] | |||||||||||||
|
|||||||||||||
6月6日に日光市のやや乾燥気味の中間湿原(alt 1400m)でヒメミズゴケ S. fimbriatum に隣接して群れを作っていたミズゴケを観察した。生態写真は撮っていなかった。 茎は高さ5〜10cm。開出枝に比較して下垂枝がやや長い。茎の色は緑色で、表皮細胞は矩形で穴はなく、横断面で表皮細胞は2〜3層。枝の表皮細胞でレトルト細胞の首は短く、横断面でレトルト細胞は2〜4列に並ぶ。 茎葉は二等辺三角形で、長さ1.0〜1.2mm、先端に2〜3個の歯がある。茎葉の透明細胞には膜壁があり、中央部から上には背腹両面に糸があり、背面側には破れたような穴がある。茎葉の縁の舷は上部では狭いが、下部から基部にかけては葉幅の1/2を超える。 |
|||||||||||||
|
|
||||||||||||
枝葉は卵状披針形で、長さ1.0〜1.3mm、乾燥しても縁が波打つことはない。枝葉背面の透明細胞には三日月形の貫通しない穴や、双子穴や三子孔があり、腹面の透明細胞には偽孔や糸があり、中央部の縁に近い透明細胞には貫通する穴がいくつもある。枝葉腹面頂部の細胞には穴がないが、中には亀裂状の穴をもった細胞もある。枝葉の横断面で、葉緑細胞は二等辺三角形で、腹面側に広く開いている。
茎や枝の表皮細胞に螺旋状肥厚がないからミズゴケ節 Sect. Sphagnum ではない。また、枝葉の先端は鋭頭で、枝葉横断面で葉緑細胞は開いているから、キダチミズゴケ節 Sect. Rigida やキレハミズゴケ節 Sect. Insulosa ではない。茎葉は小さく、舷が基部で大きく広がっているから、ウロコミズゴケ節 Sect. Squarrosa でもない。枝葉の透明細胞の背側に小孔が一列に並ぶことはないから、ユガミミズゴケ節 Sect. Subsecunda でもない。枝葉は乾いても縁が波打つことはなく、横断面で葉緑細胞の底が腹面側に開いているからハリミズゴケ節 Sect. Cuspidata でもない。残るのはスギバミズゴケ節 Sect. Acutifolia だけとなる。 |
|||||||||||||