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[標本番号:No.0966   採集日:2010/06/06   採集地:栃木県、日光市]
[和名:ヤマハイゴケ   学名:Hypnum subimponens ssp. ulophyllum]
 
2010年8月18日(水)
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
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(r)
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(a, b, c) 植物体、(d) 標本、(e) 乾燥時、(f) 湿時、(g) 茎葉と枝葉、(h) 茎葉、(i) 茎葉の葉身細胞、(j) 茎葉の翼部、(k) 茎葉の先端、(l) 茎葉の横断面、(m) 枝葉、(n) 枝葉の葉身細胞、(o) 枝葉の翼部、(p) 枝葉の先端、(q, r) 茎の横断面

 6月6日に日光市の鶏頂山で採取した最後の蘚類を観察した。山道の途中、標高1440mあたりの岩と腐植土に黄緑色のマットを作っていた。茎ははい、やや羽状に分枝する。枝は葉を含めて幅1〜2mm。茎や枝の横断面に中心束はなく、表皮細胞は大形で薄膜。
 茎葉は長さ1.1〜1.6mm、卵形の基部から細く長く披針形に伸び、上部は強く鎌形に曲がる。上部に目立ちにくい小さな歯がある。中肋はほとんど目立たないか、短いものが2本ある。葉身細胞は線形で長さ45〜80μm、幅3〜5μm、薄膜で平滑。翼部には方形で薄膜の褐色を帯びた細胞が少数ある。葉の先端は幅2〜3細胞で鋭く長い。枝葉は長さ0.8〜1.2mm、茎葉より幅が狭く、長卵形の基部から長く針状に伸びる。葉の上部に目立たない小さな歯がある。中肋は2本で短く、しばしば不明瞭。葉身細胞や、翼部、先端部の様子は、茎葉のそれとほぼ同じ。

 ハイゴケ属 Hypnum の蘚類だろう。平凡社図鑑の検索表をたどると、ヤマハイゴケ Hypnum subimponens ssp. ulophyllum に落ちる。種の解説を読むと、茎葉の大きさと中肋の件が観察結果とは異なるが、他はほぼ符合する。なお、とりあえずヤマハイゴケとしたままの標本No.88をあらためて見当し直した結果、これはヒラハイゴケ H. erectiusculum とするのが適切と思われるので、「修正と補足」を加えて訂正した。