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[標本番号:No.0975 採集日:2010/06/12 採集地:長野県、山ノ内町] [和名:カヤゴケ 学名:Rhynchostegium inclinatum] | |||||||||||||||||||
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6月12日に長野県志賀高原で、日陰の岸壁に続く湿った岩穴の入口から垂れ下がっていた繊細な蘚類を観察した(alt 1600m)。茎は不規則に分枝し、枝にはやや扁平気味にまばらに葉をつける。乾燥しても葉は枝に接することなく、湿時とあまり姿は変わらない。 茎葉は長さ1.5〜2.0mm、卵状披針形で漸尖し長く尖る。葉縁には全周にわたって細かな歯があり、特に上半部では顕著である。中肋は弱く、葉長の2/3あたりに達し、先端部に刺はない。葉身細胞は長い線形で、長さ80〜120μm、幅5〜8μm、薄膜で平滑。翼部はあまり発達せず、他から明瞭には区別できない。枝葉は茎葉よりやや小型だが、形や葉身細胞の様子は茎葉のそれとほぼ同様。葉縁の歯が茎葉より明瞭で相対的にやや大きい。茎や枝の横断面には弱い中心束があり、表皮細胞はやや小型で薄膜。毛葉は無性芽は見あたらない。 胞子体をつけた個体は見あたらなかった。現地では当初ヤナギゴケ科 Amblystegiaceae の蘚類のように感じたが、ルーペでみると葉の翼部が明瞭な区画をなしていない。茎葉の基部の端は細く下延しているが、翼部の細胞はほとんど分化していない。そこで、アオギヌゴケ科 Brachytheciaceae カヤゴケ属 Rhynchostegium の蘚類だと思った。該当するのはコカヤゴケ R. pallidifolium しかない。これまでに観察してきたコカヤゴケの標本(No.799, No.598, No.13)とも比較してみたが、何となく雰囲気が違うように思える。葉先がねじれた葉はなく、過去の3点の標本とは葉形が何となく違う。過去の標本の同定に誤りがあるのか、本標本の同定に誤りがあるのかもしれない。いずれにせよ、この同定結果ははなはだ心許ない。
[修正と補足:2010.09.12] |
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