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[標本番号:No.1009   採集日:2010/10/11   採集地:高知県、本川村]
[和名:ケチョウチンゴケ   学名:Rhizomnium tuomikoskii]
 
2010年11月17日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
(d)
(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
(k)
(l)
(l)
(a, b) 植物体、(c) 標本、(d) 茎上部の葉、(e) 葉上の仮根、(f) 葉の上半、(g) 葉の下半、(h) 葉縁の舷、(i) 葉身細胞、(j) 葉基部の細胞、(k) 葉頂の細胞、(l) 葉の横断面

 高知県本川村の自然公園で、遊歩道脇が沢を横切る場所の径脇にケチョウチンゴケが群生していた(alt 600m)。わかりやすいコケであるため、2006年12月に観察して以来(標本No.54)、何度も目にしてはいたが採集はしなかった。10月に高知県に行ったときに久しぶりに採集した。なお、朔をつけた個体は見あたらなかった。
 茎は長さ1〜2cm、表面には暗褐色の仮根が密生し、中部から上部に集中して葉が付き、葉は上部でもっとも大きくなる。上部の葉の腹面基部には仮根が密生している。仮根の先には紐状〜棍棒状の無性芽が立ち上がる。
 上部の葉は長さ4〜6mm、幅広の倒卵形〜団扇型で基部が細く、円頭で葉先に小さな突起があり、葉縁は全縁で、2〜4列の舷がある。中肋は葉先近くに達するが頂には届かない。葉身細胞は六角形を中心とする多角形で、葉の中央部で長さ50〜110μm、葉基部では150μmに達し、葉頂や舷の近くでは小さく、壁が顕著に肥厚し、表面がマミラ状に膨らむ。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(m, n) 葉中肋の横断面、(o) 葉の縁の横断面、(p, q) 茎の横断面、(r, s) 仮根の先から出る無性芽、(t) 茎頂部の無性芽、(u) 無性芽、(v, w) 葉身細胞壁の横断面

 葉の横断面で中肋には中心束があり、葉縁の舷は小さな肥厚した細胞からなる。横断面でみると、細胞の壁が肥厚して時にパイプ状にみえる。茎の横断面には明瞭な中心柱があり、表皮は肥厚した小さな細胞からなる。