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[標本番号:No.1035 採集日:2010/10/13 採集地:高知県、津野町] [和名:キブリナギゴケ 学名:Kindbergia arbuscula] | |||||||||||||
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高知県の四万十川の源流点でアオギヌゴケ科 Brachytheciaceae と思われる硬い感じの蘚類を採集した(alt 1000m)。渓流沿いの岩や腐植土に大きな群落を作っていた。 一次茎は這い、二次茎は斜上ないし立ち上がって、多数の枝を羽状にだし、全体は樹状となる。葉は乾燥しても湿っていても展開したままで、乾湿で姿はあまり変わらない。枝は葉を含めて幅0.8〜1.2mm。一次茎の葉は崩れたものが大半で、長さ1〜1.2mm、幅広の三角形〜腎臓形、先端は急に細くなって反り返って尖り、葉縁には微細な歯がある。中肋は葉長の4/5あたりに達する。葉身細胞は長楕円形〜線形で、長さ25〜55μm、幅4〜5μm、やや厚膜で平滑。葉基部の細胞は、楕円形〜矩形の細胞が並ぶ。 |
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二次茎と枝の葉は、長さ1〜1.2mm、広卵形で、途中からやや急に細くなって先端は幅広の鋭頭、葉縁の全周にわたって顕著な歯がある。中肋は葉頂には届かず、葉長の4/5あたりまで達する。背面の中肋先端は軽く突出している。葉身細胞は長楕円形〜線形で、長さ30〜60μm、幅4〜6μm、やや厚膜で、平滑。葉基部ではやや幅広となる。枝葉の横断面で中肋にはステライドなどはない。 茎の横断面には明瞭な中心束があるが、小枝の横断面では中心束は弱く、ときにほとんど見られない。茎でも枝でも、横断面で表皮細胞は小さくて厚壁となっている。 朔をつけた個体はなかった。二次茎の葉や枝葉の中肋背面の先端が軽く突出した様子を撮影しようと試みたが、何故か明瞭には捉えられなかった。ここでも先入観を抜きにして、平凡社図鑑の科から属への検索表をたどってみると、キブリナギゴケ属 Kindbergia に落ちる。属名の脇に「日本産2種」とあって、キブリナギゴケだけが解説されている。観察結果と照合してみるとほぼ符合する。また先にキブリナギゴケと同定した標本No.546とも比較してみたところ、同種だろうと思える。なお、生態写真はピントの甘いケータイ画像しかなかったので掲載しなかった。 |
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