どこにでもあり入手の楽なギンゴケ Bryum argenteum をコケカッターで切り出してみた。ギンゴケの葉は長さ0.5〜1.0mmでとても小さい。この葉の横断切片を作成するのは、微小なクヌギタケ属 Mycena のきのこのヒダ切片を作るのに匹敵する難しさがある。
長さ1mm未満とあまりにも葉が小さいので、セイタカスギゴケの場合と違って指先で一枚の葉を押さえることはできない。押さえ用に特殊なジグを工夫するか、茎についた状態のまま切断するしかなさそうだ。押さえ用ジグとして、柄付き針の先を潰して少し曲げたものを使った。
最初にコケカッターを使わず、実体鏡の下で切りだした(a)。葉がとても小さいので押さえにくくて、なかなか上手く行かない。次に実体鏡を使わず、ピスに葉を挟んで切り出してみた(b)。厚さは15〜18μmほどだろう。これは、微小菌類の切り出しよりもずっと楽だった。きのこと違って、コケの葉では、ピスを強く掴んでも簡単には潰れないからだ。
いよいよ、実体鏡の下でコケカッターを使って切り出しを試みた。葉一枚だけを対象にして切り出すと、コケカッターを使わない場合よりもさらに試料の押さえが難しい。コケカッターごと一緒に動いてしまい、なかなかうまく切れない。そこで、葉が多数ついた茎ごと一緒に切り出すことにした。こうすると、茎を指先でつまんで押さえることができて楽に切り出せた(c)。
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