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きのこの担子器・シスチジアの形態やサイズ等を正確に観察するには、組織を潰さないように上手くバラすことが必須となる。その場合、3〜5%程度のKOHを使うのは常識となっている。さらに、境界を明瞭にするためフロキシンなどの染色剤が使われる。 |
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蘚苔類の世界でも、スギタケの仲間(a, b)では、同定にあたって微細な構造が問題とされる。このところ「今日の雑記」はお盆休みとして、きのことは全く関係ない話題をメモってきたが、今朝の話題は、キノコ世界の手法をコケに流用したところうまくいった事例だ。
スギタケの仲間には、一般にラメラといって、葉の腹面(上を向いた面)にキノコのヒダ(ラメラ)のような構造物がある(c, d)。コケ世界では薄板という訳語が使われる。このラメラの頂端細胞の構造が、同定に大きな影響をもっている(e, f)。この部分の観察抜きでは同定は困難だ。 |
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ところが、ラメラの縦断面の様子を確認するのは難しい。ラメラを一枚だけ切り出したり取り外すのは、簡単にはできない。コケ世界に首を突っ込んで既に1年が経過する。当初は、スギゴケ仲間の葉は、横断面ばかりではなく、苦労して縦断面(i)をも切り出して観察していた。 途中から考えた。要は、ラメラを一枚横に寝かせてそれを観察すればよいわけだ。一般に生物組織はKOHで繋がりが弱くなる。担子器を観察するときの手法が使えるのではないだろうか。3%KOHで葉の一部をマウントして、カバーグラスの上から圧を加えて組織をズラしてみた。 キノコの場合とは圧の加え方と方向がやや異なるが、この方法は上手くいくことがわかった。まず、コケの葉の中央に走る太い部分(中肋という)を捨てる(j)。これを3〜5%のKOHで封入して、上にかぶせたカバーグラスの上から軽く左右にズラしながら圧を加えた。 ラメラがバラバラになった(k)。これを実体鏡の上でていねいにほぐすのもよし、そのままさらにカバーグラスを適当な厚で左右にずらすと、ラメラの縦断面がはっきりとわかるようになる。すると、ラメラの縦断面が明瞭に捉えられる(l)。ラメラ先端の様子がはっきりと分かる。 写真を撮るのでもなければ、これで充分だ。文章で記すと長いが、この作業に要する時間は、せいぜい30〜40秒にすぎない。ラメラの縦断面を撮影するのであれば、実体鏡のしたでラメラを数本だけバラして撮影すればよい。ラメラ一枚を縦切りにする労力と技術にくらべれば、こんなに簡単なことはない。 思いがけないところで、きのこ観察で培った技術は他の世界でも生きることがわかった。もっとも、コケ世界でも、キノコ観察で培った技術はそのまま役立っている。 |
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