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先にヨモギの根からでるきのこについて取り上げたが(雑記 2003/3/4)、兵庫のN氏はじめ何人かの方からチャムクエタケモドキ(Tubaria furfuracea (Pers.:Fr.) Gill.)としてよいのではないか、という鋭いご指摘を受けたので、その後の経過を略記しておこう。 3月4日検鏡を終えた時点でsimocybeかtubariaだろうと思った。3月16日の菌懇会例会の折に、いわき市のN氏がこのきのこの新鮮なサンプルを持ってこられた。河川敷のヨモギの根から大量に発生していたという。そしてセイタカアワダチソウの根からも出ていたということだった。川口市見沼地区の休耕田でもセイタカアワダチソウなどキク科植物の根からでていた。 菌懇会例会の場で傘表皮層を確認したところ、tubaria(チャムクエタケ属)の特徴とされる「匍匐性の糸状菌糸」が認められた。すでに観察済みの他のマクロ的/ミクロ的所見なども考慮すると、集合種(collective species)としてのTubaria furfuraceaだろうと思っている。現時点ではまだ結論を出すまでには至っていないが、T. furfuracea、T. hiemalis、T. romagnesianaあたりに落ちるのではないだろうか。simocybeでは無いように思える。和名のチャムクエタケモドキはいくつかの種が混同された状態で通用しているのではないかと考えている。 ところでtubaria(チャムクエタケ属)であるが、代表的な図鑑類にあたってみると、所属する「科」が揺れ動いている。保育社「原色日本新菌類図鑑」ではCrepidotaceae(チャヒラタケ科)、スイス菌類図鑑Vol.4ではStrophariaceae(モエギタケ科)、Dictionary of the Fungiも第8版(1995)ではCrepidotaceaeとされていたが、第9版(2001)ではCortinariaceae(フウセンタケ科)と記述があらためられている。池田著「石川のきのこ図鑑」では保育社の図鑑を踏襲してCrepidotaceaeとしている。Dictionary of the Fungiの記述があらためられたのは、最近のDNA鑑定に基づく分子系統分類学の成果を取り入れたものだろうか。 |
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