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埼玉県小鹿野町の標高800メートルの林道でボロボロに普及した材からズキンタケの仲間がでていた(a, b)。ちょっと見たところでは、Ascocoryne属の子嚢菌である。外見だけでは、ムラサキゴムタケA. cylichniumなのかA. sarcoidesなのかは区別はできないとされる。 子実層を切り出すと、子嚢の先端付近がやたらにゴチャゴチャしている(c)。メルツァーを加えると、どうやら子嚢先端付近の頂孔が青く染まっているようだ(d)。子実下層や托外皮層は絡み合い菌組織ないし表皮状菌組織をなしている(e)。 さらに一段倍率を上げて子嚢の先端付近をみると、紡錘形の子嚢胞子の他に小さな類球形の組織が多数みえる(f)。まるで他の菌の胞子が混入したかのようだ。子嚢先端の頂孔付近を拡大してみると、アミロイド部分がよくわかる(g)。側糸は糸状で先端がやや膨大している。 子嚢胞子は隔壁で5〜6室に仕切られ、胞子表面には小さな分生子をつけたものがある(h, i)。しばらく放置していると、分生子は胞子から分離して周囲に多数漂いはじめた(j)。低倍率で子実層付近をみたときに、やたらにゴチャゴチャしていたのは、子嚢胞子と分生子が一面に漂っていたせいらしい。これらの特徴から、これはムラサキゴムタケとしてよさそうだ。 数年前に、ムラサキゴムタケのようにみえるAscocoryneがあった。その折りは、完熟個体が得られず同定を放棄したが、胞子の特徴と分生子などを考慮すると、これもムラサキゴムタケとしてよいだろう(雑記2002.10.31)。 実はこのきのこについては、雑記で取りあげるつもりは全くなかった。しかし、昨日の菌懇会例会でたまたま話題に上ったので、とりあえず今朝その気になって記述した。 |
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