2007年5月2日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 日光のカラマツ林で、地上に落ちた枝や葉から茶色の脆いキノコがでていた(a, b)。他にあまりキノコもないので持ち帰った。
 傘は全体が均一の赤褐色、湿時吸水性が強く、縁に条線はみられず、乾くと淡褐色〜白褐色になる。柄にツバはなく、上部には被膜跡の様な白色菌糸帯があり(b, c)、基部は白色の菌糸に覆われている(c)。胞子紋は黄土色〜汚褐色、胞子は楕円形で平滑、7〜10 x 4.5〜6μm、発芽孔や胞子盤はなく、脆くて壊れやすい(d)。カバーグラスを柄付き針の先で、軽くつついただけで、胞子は簡単に割れてしまった。
 胞子を観察したあと、ヒダを切りだした。二つ割りにしたピス(雑記2007.4.15)を使って切り出した(e)。次に、二つ割りにはせず楔形の切れ目を入れ、そこにヒダに挟んで切り出した。挟んだ段階で子実層が托実質に食い込んでしまい、ピスを固定してカミソリをあてると、予期していたとおり、全体が軽く潰れて幅広の子実層状態となってしまった(f)。
 多少厚かったり潰れていても、側シスチジアのないこと、さらには子実層托実質が並列型であることはわかる(g)。ヒダを一枚取りはずし、そのままスライドグラスに載せて縁をみると、縁シスチジアがあることがわかる。
 改めて、ヒダの縁近くを細長く切り出して、フロキシンでそめて3%KOHで封入した。歪んだ柱状の縁シスチジア(i)、基部にクランプを持つ担子器を明瞭に見分けることができる(j)。傘の上表皮は平行に菌糸が走る(k)。柄の基部の白色の菌糸には到るところにクランプが見られる(l)。
 観察結果にもとづいて、保育社の図鑑の検索表をたどると、チャヒラタケ科のチャムクエタケ属にたどり着く。属の検索表をみると、3つの種が載っている。柄にはツバがないからヒメツツエタケではない。次に、チャムクエタケモドキとすると湿っているときに「傘の周辺部に条線」がない。チャムクエタケとすると胞子の形状が「やや尖った類アーモンド型」とは言い難い。
 チャムクエタケの可能性は高いが、そうとも言い切れない。いずれにしても、Tubaria(チャムクエタケ属)のきのこらしい。採取(4/29)から既に数日が経過し、きのこのヒダには白く小さなウジ虫がモゾモゾしだしていた。ここまで分かれば充分なので、きのこは廃棄した。

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