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2017年10月25日(水) アカツムタケをいじくりまわした
 先日群馬県片品村の亜高山帯針葉樹林で採取してきたアカツムタケが冷蔵庫に放置されていた。捨てる前にいろいろと眺めて遊んだ。現地では材や地表からいろいろな形のものがでていた。典型的な姿のものもあったが、ヘルメット型や扁平なものもあった。
 ヘルメット型のきのこを切って並べるとまるで家紋のようだ(e)。櫛の歯状に切ってみてもなにもわからない(g)。一晩紙の上にカサを伏せておくと濃紫色の胞子紋が出来上がった(i)。そこから胞子をカバーグラスにとって対物40倍でみた(j)。対物油浸100倍にしてみると、さらに胞子の詳細が見やすくなったが、発芽孔がいまひとつはっきりしない(k)。そこで濃硫酸で封入してみた。アカツムタケに限らず、担子菌の胞子の発芽孔の有無は、たいていの場合濃硫酸で封入すれば明瞭にわかる。この場合発芽孔があることがはっきりした(l)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 まだまだ遊びは続く。ヒダを一枚スライドグラスに載せて縁を見た(m)。フロキシンで染めると縁シスチジアの姿がよりはっきりする(n)。そのままカバーグラスの縁からKOHを流し込んで、全体を押しつぶしてみると縁シスチジアやクリソシスチジアがわかりやすくなった(o)。さらに詳細を観察したければ対物油浸100倍にする(p)。
 あまり意味はないが、ヒダの切片を切り出すことにした。カサの一部をスライドグラスに載せて、剃刀で適当にバッサバッサと切ってみた(q)。このうちから薄く切れていそうなものを顕微鏡で覗いた(r)。倍率を上げて先端を見た(s)。油浸にしてもみた(t)。
 改めてヒダの縁をごく一部、ピンセットでつまみ出して、フロキシンで染め、KOHで封入して、押しつぶしてみた。すると、シスチジア(u)、クランプ(v)、担子器の基部(w)などが見やすくなった。
 カサ表も薄切りにしてから倍率を上げて見た。上表皮は細い菌糸が平行に走っているが、これは低倍率ではわかりにくい。
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
 先日の雑記にアカツムタケと書いた時には、普段通りヒダの一部をつまみ出して、胞子とシスチジアだけをちょちょっとみて種名を確認した。まだきのこ本体を処分せずに冷蔵庫に保管してあったので、今朝はこんなバカげた遊びをしてその過程の画像を撮影した。