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[標本番号:No.591   採集日:2009/02/07   採集地:静岡県、河津町]
[和名:ハネヒツジゴケ   学名:Brachythecium plumosum]
 
2009年2月24日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 2月7日の伊豆旧天城トンネル近くの林道脇の岸壁(alt 630m)で、フトリュウビゴケ(標本No.590)に混じって小さな蘚類が朔をつけていた(a, b)。フトリュウビゴケを採集するときに混生していることに気づいて、小さな群れを一つ持ち帰っていた。2月7日に採取した最後のひとつだ。

(a) フトリュウビゴケ群落に混生、(b) 採集した小群落、(c) 乾燥時、(d) 湿時、(e) 茎葉と枝葉、(f) 茎葉、(g) 茎葉の先端と翼部、(h) 茎葉中央の葉身細胞、(i) 茎葉翼部の葉身細胞、(j) 茎葉下部の横断面、(k) 中肋の横断面、(l) 茎の横断面

 一次茎は岩をはい、不規則に密に分枝し、各枝は斜上しわずかに小枝をだす。葉を含めた枝の幅は1.5〜2.5mm、枝の長さは1〜3cm。湿ると枝葉は展開するが、茎葉はほとんど変化なく、全体として乾湿で姿にあまり変化はない(c, d)。
 一次茎の葉はほとんど崩れているので、斜上する二次茎の葉を観察した。茎葉は披針形〜卵状披針形で、長さ2〜2.5m、葉先は鋭く、葉縁には小さな歯がある(e〜g)。中肋は一本で葉長の1/2〜3/4に達する。枝葉は茎葉より小さく、長さ1.5〜2mm、葉縁には歯がある。
 茎葉の葉身細胞は線形で、長さ55〜75μm、幅4〜5μm、平滑で(h)、翼部は未発達で明瞭には分化せず、幅広で短い矩形の細胞が並ぶ(i)。茎葉の横断面で中肋にはガイドセルやステライドはない(j, k)。枝葉の葉身細胞は茎葉のそれとほぼ同様。茎の横断面には中心束がある(l)。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
(m) 朔柄基部と苞葉、(n) 苞葉、(o) 苞葉中央の葉身細胞、(p) 苞葉基部の葉身細胞、(q) 胞子体、(r) 蓋と朔、(s) 朔歯、(t) 外朔歯、(u) 内朔歯、(v) 外朔歯の先端、(w) 外朔歯上部、(x) 外朔歯基部

 苞葉は卵形の鞘部から急に細くなって反曲し長く伸び、長さ1.2〜2mm(m, n)。苞葉の葉身細胞は、中央部から先で長楕円形〜線形で、長さ60〜90μm、幅6〜10μm(o)、基部では短く幅広の矩形〜楕円形となる(p)。中肋の有無などははっきりしない。
 胞子体は長さ2〜2.5cm、朔は僧帽形の帽をかぶるが(b)、標本では帽はほとんど落ちていた。朔は卵形で傾いてつき、非相称。蓋は円錐形で、先端は嘴状に尖る。蓋を外すと、外朔歯が一気に反り返った(r)。朔は二重で、それぞれ16枚(s)。詳細に観察するため外朔歯と内朔歯を分離した(t, u)。口環がよく発達している。
 外朔歯は披針形で、先端から上部には表面に微細なイボがあり、中央から下部では横条が発達している。外朔歯の中央には縦にジグザグ状に亀裂がある(v〜x)。外朔歯に上から圧力を加えると縦の亀裂の部分で二つに割れた
 
 
 
(y)
(y)
(z)
(z)
(aa)
(aa)
(ab)
(ab)
(ac)
(ac)
(ad)
(ad)
(ae)
(ae)
(af)
(af)
(ag)
(ag)
(ah)
(ah)
(ai)
(ai)
(aj)
(aj)
(y) 内朔歯上部、(z) 内朔歯中央、(aa) 内朔歯の基礎膜 、(ab) 朔柄上部、(ac) 朔柄下部、(ad) 朔柄上部の横断面、(ae) 朔の基部、(af) 気孔、(ag) 朔の横断面、(ah) 朔壁横断面、(ai) 朔外表皮の細胞、(aj) 胞子

 内朔歯は高い基礎膜をもつ(u)。内朔歯先端の歯突起と間毛には微細なイボがあり(y)、歯突起の基部や基礎膜の部分には横に顕著な隆起があり、表面は微細なイボに覆われる(z, aa)。基礎膜上部間毛の基部付近の姿は興味深い。
 朔柄は表面上部には微細なイボがあり、中央から下部は平滑(ab, ac)。柄上部の横断面をみると微イボの様子がわかる(ad)。朔の基部には気孔がある(ae, af)。朔の横断面をみると、大形でやや厚壁の外表皮と、薄膜の内表皮が明瞭に分解している(ah ,ai。胞子は球形で、径12〜18μm(aj)。

 アオギヌゴケ科の蘚類だろう。平凡社図鑑の属への検索表をたどってみた。観察結果に基づいて素直にたどると、アオギヌゴケ属 Brachythecium に落ちる。ついで、種への検索表をたどると、ハネヒツジゴケ B. plumosum となる。種の解説を読むと、観察結果とおおむね一致するが、葉の形などは解説の記述よりも幅広である。「ノート」に「変異が著しく、多くの変種が記載されている」とあるから、広義のハネヒツジゴケとしてよいのではないかと思う。
 以前観察して属名までしか判明しなかった標本No.213もやはり広義のハネヒツジゴケではないかと思う。本標本を観察するにあたって、No.213を今一度観察してみると、葉の形も本標本とそっくりなものがあり、葉の横断面の様子、葉中央部の葉身細胞や翼部のそれも、本標本と同一種と考えるに十分な類似を見いだせた。