Top  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.647   採集日:2009/05/17   採集地:東京都、檜原村]
[和名:オオベニハイゴケ   学名:Hypnum sakuraii]
 
2009年5月24日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(a, b) 植物体、(c) 乾燥標本、(d) 乾燥時、(e) 湿時、(f, g) 茎葉と枝葉、(h) 茎葉の葉身細胞、(i) 茎葉翼部の細胞、(j) 茎葉尖端の葉身細胞、(k) 枝葉の葉身細胞、(l, m) 枝葉の葉身細胞上端にある突起、(n) 茎下部の横断面、(o) 茎中央の横断面、(p) 枝の横断面、(q, r) 枝葉の横断面

 5月17日に東京都檜原村の神戸岩近くで行われた岡モス東京(岡山コケの会東京)の観察会の折りに採取した蘚類が一つ残っていた。渓流近くの岩(alt 500m)についていたコケは、一見すると普通のハイゴケだが、何となく赤みが強く、艶があった(a, b)。現地では、ハイゴケではなくてオオベニハイゴケの可能性が高いという話になっていた。
 茎ははい、不規則に分枝していたが、採集した標本は茎が途中で千切れてしまったものばかりだった(c)。枝の幅は葉を含めて1.2〜2mm、乾燥していても湿っていても姿はほとんど変わらない(d, e)。茎や枝は黄緑色〜赤褐色で、太くて基部に近い部分では褐色が強い。
 茎葉は長さ2〜2.5mm、卵形の葉身部から漸尖して、尖り、葉縁の上半には微細な歯があり、上半は強く鎌形に曲がる。短い中肋が二本ある。枝葉も茎葉とほぼ同じ形で、やや小さい。葉身細胞は線形で、長さ50〜90μm、やや厚壁で(i, k)、翼部には少数の方形細胞と大形の透明細胞がある(i)。枝葉の葉身細胞の中には、細胞上端がやや突出したものがみられる(l, m)。
 茎の横断面では、中心束があり、表皮はおおかたが厚壁の小さな細胞からなるが、一部に大形薄膜の細胞も混じる(n, o)。枝の横断面では表皮細胞は、小形厚膜のものばかりではなく、中形で薄膜の部分もある。

 ハイゴケ属 Hypnum には間違いないので、先入観を抜きにして、平凡社図鑑で検索表をたどってみた。観察結果に基づいてたどっていくと、オオベニハイゴケ H. sakuraii にたどりつく。種の解説を読むと観察結果とほぼ一致する。ただ、枝葉の葉身細胞上端の微突起については、平凡社図鑑には触れられていない。以前観察したハイゴケ標本(No.138No.103No36)と比較すると、確かに葉身細胞がそれらより長めで、翼部の方形細胞の数が少ない。