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[標本番号:No.808   採集日:2009/12/13   採集地:栃木県、鹿沼市]
[和名:ケヘチマゴケ   学名:Pohlia flexuosa]
 
2009年12月30日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(a) 植物体、(b) 乾燥時:黄矢印、(c) 湿時:黄矢印、(d) 乾燥時:左上2本、(e) 湿時、(f, g) 葉、(h) 葉の上半、(i) 葉先、(j) 葉の中央部、(k) 葉の基部、(l) 葉の横断面、(m, n) 茎の横断面、(o) 茎頂部の無性芽、(p, q) 無性芽、(r) 無性芽の横断面

 前日光林道を足尾方面に向かう途中、粕尾峠下で(alt 840〜900m)、日陰の土の斜面に群生していた蘚類を採取した(a)。現地でははっきりわからなかったが、標本を開いてみると、おおざっぱに2種の群落に分けられた(b, c)。一つは昨日取り上げたススキゴケ(標本No.826)だった。今日は残りの一つ、葉腋と茎頂に多数の無性芽をつけた蘚類を観察した。
 茎は長さ8〜15mm、若い茎は緑色だが多くは赤褐色で、横断面で弱い中心束がある(m)。成熟した赤褐色の茎は内部が空洞となったものが多い(n)。茎の表皮はやや厚膜の小さな細胞からなる。乾燥すると葉は縦に緩い皺ができるが縮れることはない(d)。
 葉は長さ1.5〜2.2mm、披針形で葉縁に舷はなく、上半部の縁に歯がある。中肋は強く、葉頂近くに達する(f, g, h)。葉身細胞は細長い六角形〜線形で、長さ70〜100μm、幅8〜10μm、薄膜で平滑(i, j)、基部ではやや幅が広がる(k)。翼部はほとんど分化しない。葉の横断面で中肋にはガイドセルがあり、葉下半部の中肋にはステライドがある(l, m)。タオルを捻ったような形の無性芽が葉腋にでき、茎先近くでは無性芽が球状に無数につく(o〜r)。

 朔をつけた個体が一つだけあったが、既に蓋はなく朔歯はすっかり崩れ、胞子もほとんど残っていなかった。朔外壁に気孔があるかどうかも確認できなかった。
 ハリガネゴケ科 Bryaceae ヘチマゴケ属 Pohlia の蘚類だろう。平凡社図鑑の検索表をたどると、ケヘチマゴケ P. flexuosa に落ちる。種の解説をよむと観察結果とほぼ符合する。過去にケヘチマゴケと同定した標本No.513と比較してみたが、まず間違いなさそうだ。なお、新たな標本番号を与えず、欠番となっていたNo.808をこの標本の番号として割り当てた。