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[標本番号:No.860   採集日:2010/04/11   採集地:神奈川県、厚木市]
[和名:ナガヒツジゴケ   学名:Brachythecium buchananii]
 
2010年4月14日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
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(l)
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(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
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(p)
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(q)
(q)
(r)
(r)
(a, b, c) 植物体、(d) 標本、(e) 乾燥時、(f) 湿時、(g) 茎葉、(h) 枝葉、(i) 枝葉、(j) 枝葉の葉身細胞、(k) 枝葉の先端、(l) 枝葉の基部、(m) 茎葉:サフラニン染色、(n) 茎葉の葉身細胞:同前、(o) 枝葉上部の横断面、(p) 枝葉下部の横断面、(q) 茎の横断面、(r) 枝の横断面

 神奈川県の七沢森林公園入口付近の石垣に着いていたコケを観察した。アオギヌゴケ属 Brachythecium のようだが、朔をつけた個体は見あたらなかった。
 茎は石垣を匍い、長さ3〜6cm、不規則羽状に斜上する枝を出す。茎葉は卵状披針形で、長さ2.1〜2.3mm、縦皺があり、先端は急に長く尖り、葉縁には目立たない微歯があるか全縁。中肋は弱々しく、葉長の1/2〜2/3で終わる。枝葉は長卵状披針形〜三角状披針形で弱い縦皺があり、長さ1.6〜2.0mm、葉上部の縁を除いて全縁。中肋は葉長の2/3辺りで消える。
 茎葉の葉身細胞は枝葉とほぼ同じなので、ここでは枝葉の葉身細胞についてのみ記す。葉身細胞は長い紡錘形〜線形で、長さ50〜90μm、幅5〜7μm、壁は薄く、平滑。枝葉上部と下部で横断面を切り出してみた(o, p)。中肋にはガイドセルやステライドはない。茎や枝の横断面には弱い中心束があり、いずれも表皮はやや薄膜で大きめの細胞からなる。

 アオギヌゴケ属 Brachythecium のナガヒツジゴケ B. buchananii だろうと思う。本標本の同定作業にともない、過去にナガヒツジゴケと同定した標本3点(No.203, No.72, No.51)をすべて再検討して、それらと比較した。その結果、No.51に「修正と補足」を加え画像を加えた。