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[標本番号:No.0878   採集日:2010/04/11   採集地:神奈川県、清川村]
[和名:アオギヌゴケ   学名:Brachythecium populeum]
 
2010年4月16日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a) 植物体、(b, c) 標本、(d) 乾燥時、(e) 湿時、(f) 茎葉と枝葉、(g) 枝葉、(h) 枝葉の葉身細胞、(i) 枝葉先端、(j) 枝葉翼部、(k) 枝葉横断面、(l) 枝の横断面

 神奈川県東丹沢の本谷川流域で石垣についていたコケの占有種である標本No.861と混生していた蘚類を観察した(a)。現地ではアオギヌゴケ Brachythecium populeum だろうと思っていた。自らの記憶力は全く信用できないので、乾湿での状態(d, e)、枝葉の葉身細胞の様子(g〜k)、枝の横断面(l)などを観察して、過去にアオギヌゴケとした標本とも照合してみた(標本No.814, No.709)。その結果は、どうやらアオギヌゴケに間違いなさそうだ。この種は過去に2度ほど観察しているが、いずれも外朔歯と内朔歯をうまく分離できなかった。そこで今朝は配偶体の文字による記述は省略して、二重になっている内外朔歯を分離して観察することを試みた。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
(m) 朔、(n) 朔枝の上部、(o) 朔柄上部の横断面、(p) 朔柄下部の横断面、(q) 気孔、(r) 朔歯の開閉、(s) 外朔歯、(t) 外朔歯上半、(u) 外朔歯下半、(v) 内朔歯、(w) 内朔歯上半、(x) 内朔歯下半

 残念ながら、帽や蓋のついた朔はひとつもなく、胞子体も全体に崩れはじめていた。朔柄は長さ1.5〜2.0mm、上半部の表面には微細な疣がある(b, n〜p)。朔の基部には気孔がある(q)。朔歯は二重でそれぞれ16枚(r)。朔歯の状態がよいものを選んで、外朔歯が開閉する様子をみた(r)。
 外朔歯と内朔歯を分離する作業は、実体鏡を覗きながら、先細のピンセットを慎重に使って行うことになる。内朔歯には高い基礎膜があり、歯突起の脇には糸のような長い間毛がある。