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[標本番号:No.0935   採集日:2010/05/16   採集地:山梨県、鳴沢村]
[和名:チシマシッポゴケ   学名:Dicranum majus]
 
2010年7月16日(金)
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(a) 標本:湿時、(b) 葉、(c) 葉の下半、(d) 葉身細胞、(e) 葉基部の葉身細胞、(f) 葉の先端部、(g) 葉の上部:中肋背面に合焦、(h) 葉の上部:葉の縁に合焦、(i, j, k, l) 葉の横断面、(m, n, o) 茎の横断面

 富士山の五合目付近で、腐植土上にシッポゴケ属 Dicranum の蘚類が塊状になって群生していた(alt 2400m)。現地でルーペで観察した結果はチシマシッポゴケ D. majus だろうと思った。チシマシッポゴケであれば、昨年秋に生態写真はもちろん、胞子体についても詳細な観察をしていたことを思い出した(標本No.721)。そのため、生態写真は撮影しなかった。
 茎は長さ10〜12cm、わずかに分枝する。葉は細長く狭い披針形で、長さ10〜14mm、弱く弓形〜鎌形に曲がり、乾燥しても姿はあまり変わらない。葉身上部の縁や中肋背面には歯がある。中肋は細く、下部で葉幅の1/10以下、葉先付近で葉幅の1/4〜1/5、葉頂に達する。葉身細胞は長い楕円形〜紡錘形で、長さ45〜80μm、膜には明瞭なくびれがあり、葉の先端近くの細胞の端は刺状となっている。葉の横断面で、中肋には背腹にステライドがある。茎の横断面には中心束があり、表皮細胞は小さくやや厚膜。

 念のために本標本をNo.721とも比較してみたが、チシマシッポゴケに間違いなさそうだ。昨年9月に、胞子体まで含めて詳細に観察していることもあり、アップせずにそのまま標本箱に格納するつもりだった。しかし、No.721の観察記録と画像を見ようとハードディスクを探したところどこにもない。一瞬、そんな馬鹿な! と思ったが、昨年の悪夢を思い出した(「たわごと」→「2009年9月30日(水):ハードディスククラッシュ!」)。それゆえアップすることにした。胞子体をつけた個体はなかったが、後日改めて再びアップしようと思う。

 大形の葉ゆえ、横断面のプレパラートは楽に作成できるだろうと思っていたが、思いの外難儀した。標本No.721の観察時には、比較的楽に横断面のプレパラートを作れたので、本標本でも全く問題なく楽に作れると考えていた。標本No.721では葉の横断面切り出しにはピスを用いた。一方、本標本ではピスを使わず実体鏡の下でカミソリをあてた。
 具体的には茎から葉を外すことなく、そのままスライドグラス上に寝かせて、上からカミソリを落として横断面の群れをいくつも作った。これから不要な部分を取り除いて少数の切片を残す。切り出し作業は低倍率で行い、選別作業はそれより倍率を上げて行った。
 分別作業が思い通りにできなかった最大の理由は、ピンセットの先端に問題があったようだ。ぶつけたり落下させてしまったことにより、先端がピッタリと合わなくなっている。砥石を使って調整してもダメだった。このため、わずかの距離を移動させようと切片に触れると、倒れてしまったり、潰れてしまう。また、あらたにピンセットを調達しなくてはならないようだ。