2017年9月15日(金) 胞子が偽アミロイド:カシサルノコシカケ マクラタケ
 一昨日奥日光千手ケ原を歩いた時(雑記2017.9.14)、久しぶりに大型の硬質菌を持ち帰ってきた(a, b)。今の時期はカサと柄をもったきのこが一気に多数出るので、硬いきのこを採取しても観察する時間がとりにくい。おのずと硬質菌の採取や観察は冬場になってしまう。
 しかし、この日の奥日光では詳細な観察が必要なきのこは全くなかったので、たまたま目に着いた新鮮な大型硬質菌を一点だけ持ち帰ってきた。これをいじくりまわしてみた。
 カサの上面には面白いコブがあった(c, e)。裏面(子実層面)の孔口はほぼ円形で4〜6個/1mmほどある(d, f, j)。カサ表面や断面にα-ナフトール・アルコール溶液を滴下すると紫色に変色した(k, l)。しかし、断面の方は全体が暗褐色のため色の変化はよくわからない(l)。まぁ、いずれにせよ紫色の変色するからこれは白色腐朽菌だ。そうそう宿主は広葉樹だった。
 ルーペで断面の管孔をよく見ると小さな白色の粒がキラキラ光るのが見えた(h, i)。おそらく担子器か胞子だろう。きのこを子実層面を下にしてキムタオルの上に一日放置しておくと、褐色の紙が白色に染まっていた。無色透明な胞子が多数落ちた証だ。この白色部分にカバーグラスを押し付けると胞子がたっぷりついた。これを顕微鏡で覗くと類球形の胞子がみえた(m)。メルツァー試薬で封入すると明褐色に染まった。デキストリノイド(偽アミロイド)だ。
 子実層とカサ肉の境界部から菌糸を少しつまんで、フロキシンで染めてからKOHで封入してほぐしてみた。頻度は低いが剛毛体があり、原菌糸と骨格菌糸がみえた(o)。ということは、多孔菌科ではなく、Hymenochaetaceae(タバコウロコタケ科)のきのこということになる。あらためて、管孔部の組織をみると、どうやら丸みを帯びた担子器らしきものがみえる(p, q)。剛毛体は細長いものもあるが、多くは三角形やら鳥の嘴のような形をしている(o, r)。原菌糸にクランプはない。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 タバコウロコタケ科の硬質菌で類球形の胞子を持つものは限られている。さらに胞子がデキストリノイドとなると、さらに限定される。思いのほか簡単にPhellinus robustus (カシサルノコシカケ)であることが判明した。 どうやらマクラタケ Inonotus dryadeus らしい。
 きのこ「駄言駄菌」に「とても笑える光景:宇都宮市の都市公園」を追加した。コケ「観察覚書」に「カモジゴケ」を追加した。

[追記:pm.1:00]
 このきのこがカシサルノコシカケではなく、マクラタケであることは、愛媛県の I さんからの指摘で判明した。完全な誤同定だ。なお高橋『新版 北海道 きのこ図鑑』(p.126)に記述されているように「水潤性、乾時は木栓質」だが、国内の図鑑類でマクラタケのミクロの姿を記述したものはなさそうだ。MycoBankで検索したところ、観察結果とほぼ同様の検鏡図が掲載されていたが、胞子がデキストリノイドであることは記されていない。I さんありがとうございます。



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