HOME | 観察覚書:INDEX | back |
[標本番号:No.173 採集日:2007/04/07 採集地:栃木県、日光市] [和名:カモジゴケ 学名:Dicranum scoparium] | ||||||||||||||||
|
||||||||||||||||
栃木県北部標高860mの沢沿いで、腐植土から腐木の側面にかけてシッポゴケ属のコケが出ていた(a, b)。背丈は4〜6cm、やや硬い感じで、乾燥した状態では密生した仮根は褐色である。さらに乾燥が進むと、葉先はやや鎌状に曲がる。湿らすと、葉が片側によってしまった(d)。湿った時の葉の開き方は、60〜80度くらい。 葉は細長く、長さ6〜8mm、先の方では樋状に丸く内曲している(e, g)。葉先には縁に歯があり、中肋背面には歯をもった薄板がある(f〜h)。葉縁にも歯があり、縁の葉身細胞は(i)、他の部分の葉身細胞よりも短く小さい。葉身細胞は長く平滑で、膜にはくびれがある(j)。翼部では褐色の大きな細胞に分化し(k)、横断面をみると細胞が2層になっている(l, m)。 葉の横断面をみると、葉の先の方では中肋背面に背の低い薄板があり、薄板には随所に歯がある(n)。葉の中程から基部にかけては、中肋背面の薄板は不明瞭となり、中肋背面も平滑となっている(o)。 先にシッポゴケを観察しているが(覚書2006.10.7、同2007.2.16)、これも当初はシッポゴケではあるまいかと思った。しかし、過去に観察したシッポゴケと比較すると、全体に小ぶりで、ツヤがあり硬い感じを与える。葉の開き方もシッポゴケに比較すると角度が小さい。また、葉先がV字状ではなくU字状になり、乾燥時の仮根の色がかなり濃い褐色である。中肋背面に連なる薄板は、シッポゴケと比較すると背丈が高い。これらのことを考慮すると、カモジゴケ Dicranum scoparium とするのが妥当だと思われる。 |
||||||||||||||||