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[標本番号:No.556 採集日:2008/10/11 採集地:長野県、山ノ内町] [和名:オオミズゴケ 学名:Sphagnum palustre] | |||||||||||||
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10月11日に志賀高原の湿地(alt 1800)の高層湿原にオオミズゴケあるいはイボミズゴケのように見えるミズゴケが群生していた。茎は長さ8〜12cm、下垂枝は開出枝よりもやや短く、葉を含めた太さがまるで異なる(c, d)。葉は、茎葉が長さ1.2〜1.5mm、開出枝が長さ1.8〜3mm、下垂枝が長さ1.5〜2.5mmで、茎葉が最も短い(e)。 ミズゴケ節 Sect. Sphagnum の蘚であることを確認するために、茎の表皮細胞を確認した。確かに螺旋状の肥厚がある(f)。茎の横断面をみると表皮細胞は3〜4層で、木質部とは明瞭に区別される(g)。開出枝の表皮にも螺旋状に肥厚は明瞭に捉えられ、レトルト細胞は分化していない。開出枝の横断面には均一な大きさの表皮細胞がみられる。なお、下垂枝の表皮細胞をみると、さらに顕著に螺旋状肥厚がみられた。横断面は開出枝と同じなので掲げなかった。 茎葉は舌形で、葉縁に舷はなく、透明細胞背面の上部には孔や偽孔、糸の様な構造がみられ、中央部では孔や糸はみられず(k, l)、透明細胞腹面の上部には糸や偽孔が(m)、腹面中央には糸がみられる(n)。 |
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枝葉は舟状に深く凹み、卵形〜広い卵形で、先端は僧帽状となり、先端付近背面の透明細胞上端に微細な突起がある。枝葉の透明細胞背面には三子孔や双子孔がみられるが、開出枝でよりも下垂枝で顕著にみられた。開出枝の葉の透明細胞腹面には偽孔がみられ、孔はない。下垂枝では葉の透明細胞腹面上部には孔があり、中央部から下では偽孔だけとなる。 開出枝であれ下垂枝であれ、枝葉の横断面で葉緑細胞は角の丸い台形、丸味を帯びた二等辺三角形をなし、腹面に広く開いている(s, t; y, z)。葉緑細胞と透明細胞の接する壁面は平滑だが、倍率を上げると、まるでイボミズゴケのような非常に微細なパピラ風のざらつきがある。 |
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念のために、対物油浸100倍レンズで、枝葉の横断面をみた(aa)。イボミズゴケ S. papillosum のそれ(ab)と比較すると、葉緑細胞と透明細胞の壁の境界面の差異が明瞭に捉えられた。 外見からみて、全体にボテっとした印象を与えることから、ミズゴケ節のものだろうと見当はついたので、確認の意味ではじめに茎と枝の表皮細胞に螺旋状肥厚があることを確認した。ミズゴケ節なので、次に確認するのは枝葉の横断面での葉緑細胞となる。葉緑細胞が腹面に広く開いていることから、ムラサキミズゴケ S. magellanicum ではない(cf; 標本No.526)。また、葉緑細胞と透明細胞の境界面に櫛の歯状の肥厚もパピラもないので、フナガタミズゴケ S. imbricatum でもなく、イボミズゴケ S. papillosum でもない。さらに、上記の境界面に細かな網状肥厚はないのでニセオオミズゴケ S. henryense でもない。オオミズゴケとしてよさそうだ。オオミズゴケは、三重県亀山市(標本No.440)、長野県富士見町(標本No.319)産のものと、過去二度とりあげているが、今回は同じ長野県でも志賀高原で採集したので、あらためてていねいに観察してみた。 |
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