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[標本番号:No.567   採集日:2008/12/20   採集地:東京都、奥多摩町]
[和名:タチヒラゴケ   学名:Homaliadelphus targionianus]
 
2008年12月24日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 先週末出かけた奥多摩(alt 350m)で、朔を無数につけたタチヒラゴケが石灰岩壁を一面に覆っていた(a, b)。タチヒラゴケについては、ルーペで観察すれば野外で楽に同定できるようになっているので、観察覚書では取り上げず、そのまま標本箱行きとなるはずだった。しかし、胞子体をつけたものに出会ったのは初めてなので、記録写真を添えて残しておくことにした。
 なお、タチヒラゴケ Homaliadelphus targionianus と同定した根拠を残しておくため、観察した配偶体の各パーツの写真にはすべてスケールを入れた(c〜l)。そして、各々の形質状態の詳細な記述は省略し、写真だけを掲げることにした。

(c) 乾燥時の植物体、(d) 湿時の植物体、(e) 朔をつけた植物体、(f) 枝葉部の拡大、(g) 葉のいろいろ、(h) 一枚の葉、(i) 葉中央の葉身細胞、(j) 葉基部の葉身細胞、(k) 茎の横断面、(l) 葉の横断面

 ヒラゴケ科 Neckeraceae で、葉の基部に小舌片があるからタチヒラゴケ属 Homaliadelphus、石灰岩上に生え、楕円形で長さ1〜1.4mmの葉をつけるからヒメタチヒラゴケ H. targionianus var. rotundatus ではなく、タチヒラゴケと同定した。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
(m) 枝についた胞子体、(n) 胞子体、(o) 雌苞葉、(p) 造卵器と胞子体、(q) 雌苞葉上半部の葉身細胞、(r) 雌苞葉基部の葉身細胞、(s) 朔の口、(t) 朔の口付近、(u) 朔の横断面、(v) 朔基部の気孔、(w) 朔柄の横断面、(x) 胞子

 朔柄は長さ5〜6mm、表面は平滑で、茎や枝の途中から、水平に広がる葉とは直角方向に出る(b, e, m)。雌苞葉は長舌形〜ヘラ形で、長さ1〜2mm、雌苞葉の葉身細胞は、茎葉や枝葉のものとほぼ同様(o〜r)。最内側の雌苞葉には受精できなかった造卵器が残っている(p)。
 朔は円筒形で、長さ約2mm、柄に垂直につき、相称(n)。朔歯はみな落ちてしまったのか、朔の口には何もなかった(s, t)。朔の基部には気孔がある(v)。胞子は球形で、径15〜20μm(x)。

 タチヒラゴケについては、まったくの初心者の頃(2006年11月)苔類と思い込んで観察した経緯もあり(標本No.38)、すでに何度も観察覚書を記している。そして、標本No.455の覚書の末尾に「今後は、採取してもポイントだけを簡単に観察してそのまま標本箱行きとなりそうだ。」と記した。しかし、朔をつけた状態のタチヒラゴケにであったのは初めてだった。残念ながら、朔歯の残っている個体は一つもなかった。これも後日の課題となる。