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[標本番号:No.808 採集日:2009/12/13 採集地:栃木県、鹿沼市] [和名:ケヘチマゴケ 学名:Pohlia flexuosa] | |||||||||||||||||||
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前日光林道を足尾方面に向かう途中、粕尾峠下で(alt 840〜900m)、日陰の土の斜面に群生していた蘚類を採取した(a)。現地でははっきりわからなかったが、標本を開いてみると、おおざっぱに2種の群落に分けられた(b, c)。一つは昨日取り上げたススキゴケ(標本No.826)だった。今日は残りの一つ、葉腋と茎頂に多数の無性芽をつけた蘚類を観察した。 茎は長さ8〜15mm、若い茎は緑色だが多くは赤褐色で、横断面で弱い中心束がある(m)。成熟した赤褐色の茎は内部が空洞となったものが多い(n)。茎の表皮はやや厚膜の小さな細胞からなる。乾燥すると葉は縦に緩い皺ができるが縮れることはない(d)。 葉は長さ1.5〜2.2mm、披針形で葉縁に舷はなく、上半部の縁に歯がある。中肋は強く、葉頂近くに達する(f, g, h)。葉身細胞は細長い六角形〜線形で、長さ70〜100μm、幅8〜10μm、薄膜で平滑(i, j)、基部ではやや幅が広がる(k)。翼部はほとんど分化しない。葉の横断面で中肋にはガイドセルがあり、葉下半部の中肋にはステライドがある(l, m)。タオルを捻ったような形の無性芽が葉腋にでき、茎先近くでは無性芽が球状に無数につく(o〜r)。
朔をつけた個体が一つだけあったが、既に蓋はなく朔歯はすっかり崩れ、胞子もほとんど残っていなかった。朔外壁に気孔があるかどうかも確認できなかった。 |
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