(a) ケチョウチンゴケに付着する植物体、(b, d) 背面、(c, e) 腹面、(f) 腹葉、(g, h) 葉と腹葉、(i) 背片と腹片の接続部、(j) 葉身細胞、(k, l) 油体 |
高知県本川村の自然公園で10月に採取したケチョウチンゴケ(標本No.1009)の葉や仮根に、クサリゴケ科 Lejeuneaceae ないしヒメウルシゴケ科 Jubulaceae の苔類が付着していた。多くは途中で千切れて断片的になっていたが、捨てるのも忍びない。そこで新たに標本番号No.1080を立てて観察した(alt 600m)。
茎は長さ1〜1.5cm、羽状に分枝する。分枝の仕方はヤスデゴケ型に近いように思う。背片は倒瓦状につき、広く開出し、卵形で、葉先付近の縁には4〜6個の長い歯がある。腹片は背片の腹縁基部近くで繋がり、接続部は非常に狭い。腹片は茎とほぼ並行につき円筒形で、長さは幅の1.5〜2倍。スチルスの様子は不明瞭。腹葉は茎径の2〜3倍幅で、1/2〜1/3まで二裂し、縁側に6〜8個の長歯があり基部は長く下延する。葉身細胞は多角形で丸みがあり、長さ15〜25μm、トリゴンは小さく平滑。油体は各細胞に4〜10個あり、類円形〜楕円形で、微粒の集合状で、多くは眼点をもつ。
背片と腹片のキールが非常に短いことからクサリゴケ科ではなくヒメウルシゴケ科の苔類だろう。平凡社図鑑によれば「日本産2種」とあり、ヒメウルシゴケ J. japonica とジャバウルシゴケ J. hutchinsiae subsp. javanica が掲載される。検索表からはヒメウルシゴケに近い。腹葉の長歯がやや少ないが、油体に眼点があることなどから、ヒメウルシゴケとしてよいと思う。過去の標本(No.424:ヒメウルシゴケ、No.46:ジャバウルシゴケ)との比較でもヒメウルシゴケに分がある。
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