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[標本番号:No.1114 採集日:2011/07/14 採集地:大分県、泉村] [和名:クジャクゴケ 学名:Hypopterygium fauriei] | |||||||||||||||||||
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九州ではクジャクゴケ属蘚類を3点採取した。今日はそのうちの最後の1点を観察した。肉眼的には先にアップした標本(No.1108, No.1103)とほとんど区別できなかった。大分県の石灰岩地で暗い渓谷の径脇の石灰岩に広範囲に群生していた(alt 750m)。 二次茎はうちわ状に分枝し、うちわの基部にあたる位置の葉は、枝葉に比して一回り大きい。これは先の標本(No.1108, No.1103)でも同様である。本標本は柄状の二次茎がかなり長くその表面は仮根で密に被われる。腹葉の中肋は多くが葉先に達するが、同一の枝の腹葉には葉の中程で消えてしまうタイプが混在している(o, p)。側葉の中肋は葉先近くに達することはなく、葉長さの2/3〜4/5あたりで消える。側葉中央付近の葉身細胞は細長い六角形で、壁がやや厚く平滑、長さ34〜56μm。腹葉中央付近の葉身細胞は、長さ31〜47μm。 保育社図鑑の検索表からは、クジャクゴケ Hypopterygium fauriei となる。最大の決め手は葉身細胞の大きさだ。本標本も朔をつけたものがなかったので、朔柄の色は決め手に使えなかった。一昨日から観察してきたクジャクゴケ属を振り返ってみると、腹葉の中肋が葉先に達するか否か、側葉の中肋が葉長の2/3で終わるか葉先近くに達するか、といった形質状態はあまり安定した形質ではないのかもしれない。それにたいして、葉身細胞の大きさは比較的安定した形質なのだろうと思えた。本標本を含めて最近観察したクジャクゴケ属3点については、画像とスケールだけを掲げて、個々の詳細なサイズや状態についての記載は省略した。 |
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