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[標本番号:No.430   採集日:2008/04/20   採集地:栃木県、佐野市]
[和名:コウヤノマンネングサ   学名:Climacium japonicum]
 
2008年4月21日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日、栃木県前日光地域にある石裂山(おざくさん)に登った。登山道は沢沿いに続き、途中標高230mあたりで、道脇の日陰の斜面にコウヤノマンネングサかフジノマンネングサのような大型蘚類が散生していた(a)。両者の差異を明確に把握していないこともあり、現地ではどちらなのか自信をもって区別できなかった。ただ、フロウソウではないことだけは分かった。
 一本だけ抜いたつもりが、仮軸分枝をした地下茎が一緒につながって出てきた(b)。真っ直ぐに伸びた暗褐色の茎には、鱗片状に茎葉がついている。茎葉は広卵形で全縁。茎と茎葉の写真は省略した。枝を1本はずして、葉と枝表面の様子を観察することにした(c)。
 枝葉は狭い三角形で、長さ2〜2.5mm、上半2/3の縁には鋭い歯があり、中肋が葉頂近くまで達し、中肋背面上部には大型の歯がまばらにある(d)。葉身細胞は、狭い菱形〜いも虫状で、長さ35〜55μm、幅6〜8μm、やや厚膜である。
 枝の横断面をみると、表皮細胞の外側に、枝分かれした毛葉が多数ついている(e)。しかし、これだけでは、薄板のような構造なのかどうか判定できない。そこで、あらためて、枝を縦切りにして薄くしたのち、顕微鏡で表面を観察してみた。縦板はなく毛葉に被われている(f)。

 保育社の図鑑によれば、フジノマンネングサ属の小枝の表面には高さ1〜4細胞の多くの薄板が縦に並び、コウヤノマンネングサ属では薄板はなく枝分かれした多くの毛葉がある、とされる。なお、保育社図鑑では、両者を同一のコウヤノマンネングサ科に置いている。
 一方、平凡社の図鑑では、この二つの属はそれぞれ別の科として扱われ、ともに日本産は一科一属として記されている。この図鑑でも、フジノマンネングサでは、枝の表面には「1−4細胞の高さの薄板が数多く畝状に縦に並び,葉の基部にまで達する」とある。
 両図鑑とも、上記二種の葉身細胞について、コウヤノマンネングサでは「狭菱形〜線形」、フジノマンネングサでは「うじ虫状」と記す。しかし、手元の標本を比較すると、細胞の形、大きさについては、文字で表現するにあたって、両者の間に明確な線引きは難しいように感じた。
 なお、今日の観察では、詳細な観察結果は記さず、枝の表面の様子という、いわばポイントの部分だけにしか触れず、写真もわずかしか掲載しなかった。この両者については、以下のように過去に何度か詳細な観察結果を記している。

コウヤノマンネングサ Climacium japonicum Lindb.  No.123  No.100
フジノマンネングサ Pleuroziopsis ruthenica (Weinm.) Kindb. ex Britt.  No.312  No.264