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[標本番号:No.837   採集日:2010/01/05   採集地:東京都、奥多摩町]
[和名:リボンゴケ   学名:Neckeropsis nitidula]
 
2010年1月12日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a) 植物体、(b) 標本、(c) 乾燥時、(d) 湿時、(e, f) 葉、(g) 葉の上半、(h) 葉の下半、(i) 葉頂部、(j) 葉の中央部、(k) 葉の下部、(l) 葉の翼部

 奥多摩で石灰岩にヒラゴケ科の蘚類が何種類かついていた(alt 530m)。そのうちの一つで強い光沢を放っていたものを観察した(a)。乾くと葉がやや反るが巻縮したり皺ができることはなく、湿っているときと姿はほとんど変わらない(c, d)。二次茎は長さ2〜4cm、わずかに枝分かれし、葉を含めて幅は2〜3mm(b)。
 葉は4列で、極めて扁平につき、湾曲したへら状で非相称、上半部に最広部があり、長さ1.3〜1.8mm、葉先には小さな突起があり、葉上半部の縁には微歯がある(e〜g, i)。基部の片側の縁が内曲する葉もある。中肋は極めて弱く、葉の半ば付近で消え、葉を不均等に分ける(f, n)。中肋の有無が不明瞭な葉も多い(f)。
 葉身細胞は菱形〜長楕円形で、葉先や葉縁では短く、葉の下部や中肋近くでは長い。葉の中央部付近では、長さ30〜40μm、幅8〜10μm、やや厚膜で平滑(i〜k)。翼部の発達は悪く、方形〜矩形のやや小形の細胞が並ぶ(l)。茎の横断面に中心束はなく、外皮は小形厚膜の細胞からなる(o)。雌花は短い小枝状につき、葉先の尖った苞葉に包まれる。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(m) 葉の横断面、(n) 中肋が明瞭な葉、(o) 茎の横断面、(p) 雌苞葉、(q) 雌器と側糸、(r) 雌花の横断面

 ヒラゴケ科 Neckeraceae までは間違いないだろう。凾ェないのですんなりと検索表をたどることはできないが、葉が著しく扁平で、光沢のあることからリボンゴケ Neckeropsis nitidula だろうと思う。よく似た蘚類にヤマトヒラゴケ Homalia trichomanoides var. japonica があり、リボンゴケとは別の属に置かれるが、凾ェついていれば一目瞭然で区別できるらしい。
 図鑑の種の解説を読むと、リボンゴケであろうとヤマトヒラゴケであろうと、どちらにも符合するようにも思える。しかし、比較しながら読むと、次の表の様な差異があるように思える。

 分枝の多寡枝先の形状と鞭枝の多寡中肋の長さの傾向
リボンゴケ 少ない枝先まで幅広く鞭枝は少ない葉の中央に達しない
ヤマトヒラゴケ 多い枝先は細くしばしば鞭枝となる葉の中央を越える

 これらを考慮すると、本標本はリボンゴケとしてよさそうだ。なお、本標本を検討するにあたって、過去にリボンゴケとした標本(No.373、No.65)とヤマトヒラゴケとした標本(No.472)にも再検討を加えることになった。これら3点の標本を再観察して検討を加えた結果、No.373に [修正と補足] を加えてヤマトヒラゴケと修正した。他の2点(No.65、No.472)はこのままでよいと判断した。ただ、これは現時点でのものであり、後日凾つけた個体を採取できれば、再度訂正することになるかもしれない。その場合にはできたらDNA分子も使って検証してみたいと思う。