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[標本番号:No.1181   採集日:2017/05/30   採集地:群馬県、片品村]
[和名:フジノマンネングサ   学名:Pleuroziopsis ruthenica]
 
2017年6月6日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a) 植物体、(b) 標本:乾燥、(c) 標本:湿時、(d) 茎表面の葉、(e) 茎葉:ルーペ、(f) 茎葉:顕微鏡、(g) 茎葉中央部の葉身細胞、(h) 茎葉基部の葉身細胞、(i) 茎葉頂部の葉身細胞:サフラニン、(j) 茎の表皮、(k) 茎の断面、(l) 茎断面の周辺部

 山間部の残雪がかなり少なくなってきたので、金精トンネルを越えて群馬県片品村に入り、亜高山対針葉樹林の標高1,800〜1.900mあたりを歩いた。林床に一面に広がっていたフジノマンネングサを持ち帰ってきた。朔をつけた個体はなかった。日光市の自宅近く(alt 330m)ではフロウソウに、近くの都市公園ではコウヤノマンネングサはいつでも出会えるが、フジノマンネングサはかなり標高を上げないと出会えない。久しぶりの観察となった。

 一つの茎を引き抜くと近くの茎が4〜5本ほど仮軸分枝の状態で次々と繋がって抜けてきた。このコケについては配偶体だけではなく胞子体についても過去に何度か詳細に記している(標本No.519No.494No.312No.264)。今回観察した標本も過去に観たものとほとんど変わりなかった。そこで、ここではそれらの詳細は省略して、各部の画像を列挙するにとどめて、以下プレパラート作成などに関わる話題を記しておくことにした。
 

 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
(m) 茎断面の中心部、(n) 茎葉基部の断面、(o) 枝と枝葉、(p) 枝葉:ルーペ、(q) 枝葉:顕微鏡、(r) 枝葉背面:中肋先端の刺、(s) 枝葉中央部縁周辺の細胞、(t) 枝葉先端の細胞、(u) 枝葉基部、(v) 枝の表皮、(w) 枝の断面、(x) 枝葉の断面

 久しぶりにコケカッター(たわごと:2006.10.21〜10.31) etc.)を使って茎や枝の断面を切り出してみた。茎は太くてしっかりしているので楽に切れた。さらに茎葉は茎に強く密着しているので、茎葉の断面切り出しは比較的楽にできた。しかし枝葉の切り出しは上手くいかなかった。というのも、枝葉は開いた状態で枝に着いているせいか、枝を安定的に固定するのが意外と難しい。枝を押さえて、カミソリの刃をストンと落としても簡単にずれてしまう。
 かといって枝葉一枚を寝かせて切り出そうとすると、もはや指先では押さえられない。葉を押さえるための冶具などが必要になる(例:原色日本蘚苔類図鑑 p.380)。10年ほど前にスチールで作った押さえ冶具を引っ張り出してみると、すっかり錆びきって使いものにならなかった。そこで、いったん顕微鏡観察は中止して新たに押さえ冶具を作った。割箸とアルミ線(径2mm)を用いて押さえ冶具を作り、これで枝葉一枚を押さえてコケカッターで切り出した(x)。
 もっとも、茎や枝、あるいは葉の断面の形状などが重要な分類形質として取り上げられている分類群では断面切り出しは必須となるが、フジノマンネングサの場合は、茎葉や枝葉の断面はそういった形質として取り上げられていない。だから、わざわざ枝葉の断面を切り出すために時間を無駄にする必要性はない。これはもっぱら好奇心だけのものだ。しかしまだ、この冶具を使って試料を押さえることに安定感がない。