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[標本番号:No.1221   採集日:2018/02/24   採集地:栃木県、真岡市]
[和名:チヂミカヤゴケ   学名:Macvicaria ulophylla]
 
2018年3月8日(木)
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
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(r)
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(a) 樹幹に着生、(b) ルーペで観察、(c) 標本:乾燥時、(d) 標本:湿時、(e, f) 花被の周辺、(g) 背面:湿時、(h) 腹面:湿時、(i) 葉の背片、(j) 葉:背片、(k, l) 葉身細胞、(m) 油体、(n) 朔:乾燥時、(o) 朔:湿時、(p) 朔とカリプトラと花被、(q) 弾糸、(r) 胞子

 二月に真岡市の井頭公園を散策した時にハナミズキの樹幹に着生していたタイ類を観察した。現地でルーペで観ると、背片が倒瓦状につき、葉の縁が著しく波打っていた。花被や朔らしきものも多数みられた。最近はタイ類はほとんど観ていなかったので、久しぶりにじっくり見ることにして樹皮表面から剥ぎ取って持ち帰っていた。今日まで放置していたのですっかりカラカラに乾燥していた。

 葉が倒瓦状に重なり、茎に縦につき、二裂して二つに折りたたまれて、背片が腹片より大きく、腹片は舌形でキールは短く、仮根が腹葉の基部から出ていることなどから、Porellaceae (クラマゴケモドキ科)のタイ類だろうと思った。さらに花被は短い筒形で扁平、雌花は短い側枝についていることも特徴的だ。さらに背片の縁が波打ち、腹片、腹葉、苞葉などは全縁なのでMacvicaria (チヂミカヤゴケ属)に間違いなさそうだ。
 植物体は暗緑色で、茎は不規則に分枝し、長さ2〜4mm、背片は卵形で長さ1〜1.5mm、縁は全縁で著しく波打ち、やや内曲する。腹片は舌形で全縁、長さ0.3〜0.4mm、基部はわずかに下延する。キールは短い。腹葉は茎幅のほぼ二倍で、全縁、基部は下延する。腹葉の基部からは密集した状態で仮根がでる。花被は卵形でよく膨らみ、陵は不明瞭。葉の細胞は20〜30μm、薄膜でトリゴンは顕著、油体は紡錘形〜長楕円形で長さ2〜4μm。胞子は類球形で径40〜65μmで大きさにばらつきが多い。弾糸にはらせん状の肥厚を持ったものと、リング状の肥厚を持ったものの両者が見られる。

 観察結果からこのタイ類はM. ulophylla (チヂミカヤゴケ)に間違いなさそうだ。持ち帰った標本はなぜか非常に多くの泥に覆われていて、何度も水没させた状態で泥を落とさないと、腹片や腹葉の観察ができなかった。また、これらの標本は雌株だけだったらしく、雄株を特徴づける腹片とか、雄花を観察することはできなかった。しかも致命的なことに泥を落とす段階で、腹葉やら腹片の先端が崩れたり破れたりしてしまった。
 油体の観察だけは標本を持ちかえった直後に行なったが、それ以外の観察は乾燥標本を水で戻してから行なった。崩れない状態での腹葉単体の画像は得られなかった。残念ながら全体的に、過去にこのタイ類を観察した時のような(標本No.0575No.0397No.0144)、明瞭な画像を今回は得られなかった。