2010年9月1日(水)
 
イグチ切り出しの工夫
 
 ヒダをもったきのこのシスチジアやヒダ実質を確認するのは簡単だ。縁シスチジアの有無であれば、ヒダを一枚スライドグラスに寝かせて、縁をみればよい。狭い幅に縁を切り出してみてもよい。側シスチジアの有無と形を確認するのであれば、ヒダの中程から数ミリ四方の小片を切り出して押しつぶせばよい(雑記2009.4.1)。また、子実層托実質を確認するにはヒダの横断面を切り出せばよい。これには実体鏡を使うなり、簡易ミクロトームなどを使えば楽だ。
 ところがイグチの場合はちょっと事情が異なる。側シスチジアの有無と形は、孔口部を避けて管孔部の中程からひとつまみの小片を取り出して押しつぶせば簡単にわかる。やっかいなのが縁シスチジアの有無と形の確認、管孔部実質の確認だろう。本当に孔口部の先端のシスチジアなのか否かを確認するのが意外と難しいようだ(同2010.7.21)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 そこで、先日富士山で採取したクリカワヤシャイグチ(a)を素材に、一つの方法を紹介してみた。ふだんやっているように、半乾燥にはせず、生のままの状態から切り出した。
  1. 管孔部から小ブロックを切り出す:管孔に垂直になるように (b)
  2. 切り出した小ブロックをピスに挟む:孔口部を含めて、管孔に平行に (c)
  3. 実体鏡の下でピスごと切り出す:下にスライドグラスを置いて (d)
  4. 簡易ミクロトームを使ってもよい:多分この方が楽 (e)
  5. 切り出した管孔部の断面をピスと一緒にスライドグラスに置く (f)
  6. 少し多めの封入液を用いてカバーグラスをかける:ピスを残したまま (g)
 管孔部はスライドグラスの重さ程度でも簡単に倒れてしまったり潰れやすい。そこで、あえてピスを両側に残して支柱の役目をさせている(g)。縁シスチジアを正確に確認するためにも、孔口部を含めて切り出すことが肝要だ。したがって、ピスに挟み込む段階で孔口部が外にはみ出さないようにする(c)。ここまでできたら、後は検鏡するのみだ。
 ピスを支柱として使い、脆くて弱い切片が潰れないようにする方法は、応用範囲が広い。過去にもヒメヒガサヒトヨタケ節のきのこ(同2005.6.24同2006.4.15同2009.6.5)などでやっている。
 イグチ類の美しいプレパラートはこのやり方では無理だろう。ただ、多少厚い切片であっても、こうすれば楽に管孔部実質や縁シスチジアの確認ができる。

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