2012年7月23日(月)
 
胞子紋が落ちなかった
 
 先日広野町の五社山で採取したMicromphale(サカズキホウライタケ属)のきのこ(a〜c)を覗いて楽しんだ。複数の子実体のカサをカバーグラスにおいて丸二日間おいたが、胞子紋は全くおちなかった。それ以外の子実体は採取当日にすべて乾燥標本にしてしまった。
 この仲間は外見がMarasmius(ホウライタケ属)に非常に似ており、ともに強靱で乾燥標本水に浸すとやがて原形に戻る。Marasmiusではカサ表皮が子実層状やらほうき状あるいは多分枝細胞からなるのに対して、Micromphaleのカサ表皮は匍匐性の糸状菌糸からなり細胞壁に沈着する色素をもつとされる。またMarasmiusではカサ表皮にゼラチン質はないが、Micromphaleではふつうゼラチン質がある。したがって、紛らわしい時は、最初にカサ表皮をみることにしている。
[参照] Marasmius: 雑記2012.5.11同2009.6.2同2008.7.7同2008.5.29同2007.5.24
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
 カサ表皮の構造からMarasmiusでないと思われる(d)。ヒダを切り出すと、縁シスチジアがあることがわかった(e, f, g)。側シスチジアはない(e)。小柄をもった担子器は見つけられなかった(h)。また子実層をよく見るとわずかに胞子がみえた(j)。ヒダ実質は非アミロイドで(i)、菌糸にはクランプがある(k)。保育者図鑑に掲載のサカズキホウライタケは柄が「角質,中空,表面は茶褐色」とあり、本標本の柄とは異なる。「サカズキホウライタケ」ではなさそうだ。

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