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[標本番号:No.405 採集日:2008/03/29 採集地:栃木県、佐野市] [和名:ナミガタタチゴケ 学名:Atrichum undulatum] | |||||||||||||
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3月9日に栃木県の山中で6〜7種の蘚類を採取した。大半は、すでに観察したことのある種だが、これまでとは何となく印象が違っていたり、雰囲気が異なっていた。今日観察した蘚は、現地でナミガタタチゴケ Atrichum undulatum だろうと感じたが、背丈が大きく、葉も長かった。 標高800mほど、林道脇の小さな沢の簡易堰堤に積もった腐葉土に群生していた(a)。見るからにタチゴケ属 Atrichum といった印象を受けたが、背丈が6〜8cmほどあり、ナミガタタチゴケにしては大きいと感じた(b, c)。乾燥すると、葉が著しく巻縮する(d)。 葉は長さ8〜10mm、披針形で、葉の中央部あたりが最も広く、弱い横じわがあり、横じわの背面には歯があり、葉縁には2〜3列からなる舷があり(g)、葉の上半部には双生の歯があり、中肋は葉頂に達し、中肋背面上部には歯がある(e〜i)。鞘部はあまり発達していない(g)。 葉身細胞は、丸味を帯びた多角形〜方形で、長さ18〜22μm、表面は平滑(i)。鞘部の葉身細胞は矩形。葉の横断面をみると、舷の細胞は小さく厚膜で複数層の厚みがあり、薄板は腹面中肋の部分にだけあって、2〜3細胞の高さで、6〜7列、端細胞は平滑で、膜厚も他の細胞とほぼ同じ(k)。茎の組織は比較的分化しており、表皮部分は厚膜の小さな細胞からなる。随部分の細胞は薄膜で、中心束の細胞とは明確に区別できる(l)。 標本には朔をつけた個体はなく、ほとんどが雄株だった。タチゴケ属の検索表をたどると、ナミガタタチゴケとなる。保育社の図鑑では「高さ2cm前後」、平凡社の図鑑には「茎は長さ4cm近くになり」とあるが、本標本の多くは、5cmを超え、大きなものでは8cmを超えていた。葉の長さも、両図鑑とも「8mm以下」とあるが、本標本の葉は、長さ8〜10mm程あり、中には12mmというものがいくつもあった。栄養状態が非常によかったのか、大型であった。
[修正と補足:2008.04.16] |
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