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[標本番号:No.592 採集日:2009/02/07 採集地:静岡県、河津町] [和名:トヤマシノブゴケ 学名:Thuidium kanedae] | |||||||||||||
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2月7日の伊豆旧天城トンネル近くの沢でエダツヤゴケ Entodon flavescens (標本No.588)を採集したが、これにシノブゴケ属 Thuidium の蘚類が混じっていた。両者が複雑に絡み合いその場で分けることは困難だった。写真でも異なったタイプの朔が出ているのがよく分かる(a)。 かたい茎、羽状に分枝、極端に大きさの違う茎葉と枝葉、茎や枝の表面には無数の毛葉、三角形で先端が透明な糸状になる茎葉、太く先端に達する茎葉の中肋、表面に複数の乳頭を持った葉身細胞、などからトヤマシノブゴケ T. kanedae に間違いないと思う(a〜f)。 トヤマシノブゴケは過去何度も観察しているが(標本No.390、同No.107、同No.96、同No.1)、胞子体を観察したのは標本No.390がはじめてだった。そこで、改めて苞葉と胞子体について再確認する意味でやや詳細に観察することにした。 |
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雌苞葉は長い二等辺三角形で、茎葉よりも長く、長さ2〜4mm、葉先は急に細くなって線状に伸びる。葉中央部の縁からは長い繊毛が伸び、太い中肋が葉頂に達する(h〜j)。苞葉の葉身細胞はイモムシ状〜長い楕円形で、長さ40〜65μm、幅6〜8μm(k)、基部では短くて幅広の楕円形となる(l)。細胞壁は厚い。どの部分でも表面はおおく平滑で、一部の苞葉ではわずかに小さな乳頭が見られる。茎葉や枝葉の葉身細胞とは形がずいぶんと違う。 |
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朔は長卵形で、傾いてつき非相称で、長さ2〜3mm(m)、径1mmとかなり大きい(m)。朔歯は二重で、いずれも16枚からなる(n)。採集した標本にはすでに朔の蓋は失われ、胞子もほとんど残っていなかった。はじめに外朔歯と内朔歯を分離して観察することにした。 外朔歯は披針形で、下部から上部にかけ中央にジグザグの割れ目が一本入り、上部では割れ目は消えて梯子のような隆起がある。外朔歯下部では横条がめだち、先端付近では表面に微細な突起がみられる(o〜r)。 内朔歯は高い基礎膜があり、全高の1/2にまで及ぶ。基礎膜の上は披針形の歯突起と間毛となっている。それぞれの歯突起は長卵状披針形で中央に深く亀裂がはいり、表面は微細な乳頭におおわれている。間毛はその基部から細く、途中に節のようなこぶがあり、表面は針のような微細な突起におおわれる。間毛の節部からは短い棒状の小枝も見られる(s〜w)。朔の表面に気孔は見つからなかった(x)。 先に標本No.390で試みたときにも感じたが、外朔歯と内朔歯を分離する作業は思いの外面倒で難しい。採集時すでに多くの朔歯が崩れていたが、内外朔歯を分離する過程で外朔歯が簡単に壊れてしまう。それに対して、内朔歯は以外と崩れにくい。図鑑によれば「口環は分化する」とあるので、それらしき構造を探ったが結局はっきりとは分からなかった。 |
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