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[標本番号:No.1033   採集日:2010/10/13   採集地:高知県、津野町]
[和名:ミヤマサナダゴケ   学名:Plagiothecium nemorale]
 
2011年1月20日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
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(k)
(k)
(l)
(l)
(a, b) 植物体、(c) 標本:乾燥時、(d) 標本:湿時、(e) 乾燥時、(f) 湿時、(g, h) 葉、(i) 葉身細胞、(j) 葉の先端、(k) 葉の基部、(l) 茎の横断面

 高知県の四万十川の源流点で、岸壁をサナダゴケ属 Plagiothecium の蘚類が広く被っていた(alt 950m)。ルーペでみると細胞の幅がやけに広い。おそらくミヤマサナダゴケ P. nemorale だろうとは思ったが念のために少量採取してあった。
 茎は匍い、長さ3〜4cmで緩く斜上する枝をだし、やや暗緑色で光沢のある葉を扁平気味につける。葉は長さ2〜2.4mm、卵形でやや凹み、漸尖して鋭頭、中肋を挟んで非相称、全縁で、乾燥すると縮れる。中肋は2本で葉長の1/2あたりに達する。葉身細胞は扁平な六角形で、葉中央部で長さ60〜110μm、幅15〜25μm、薄壁で平滑。葉先付近では小さく、葉基部では大きくなる。翼部は明瞭な区画を作らない。茎や枝の横断面で、表皮細胞は薄膜で髄部の細胞より小さく、弱い中心束がある。

 朔をつけた個体もあったが、既に老化したものばかりで、朔歯や胞子の残っているものはなかった。腹面側の茎からは多数の仮根がでていて、葉先付近からも仮根を伸ばしたものが目立った。平凡社図鑑の検索表からはミヤマサナダゴケに落ちる。平凡社図鑑の属の特徴のところに「茎ははい,中心束はなく」とあるが、本標本ばかりではなく、以前に見たものにも茎の横断面には弱い中心束がある(標本No.1081, No.630, No.423, No.35)。