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相変わらず高熱が下がらないので、外出がままならない。そんな時には手元の不明種を調べるには絶好の機会と考えて、先に千葉県一宮町で採取した小さヒメツチグリ属(Geastrum)のきのこ(雑記2003/01/20、雑記2003/01/21)を再度詳しく検鏡してみた。Geastrum forunicatumではあるまいかと考えていたものだが、そのサイズがあまりにも小さいことが気になっていた。 まずGeastrum fornicatumと同定されたものを手元に取り寄せたのでこれと比較してみることにした。このサンプル(a, b)は1993年2月27日に都内文京区で採取されたものだ。先に採取したものもすっかり冷凍乾燥状態となっている(c, d)ので、乾燥標本どうしの比較となってちょうどよい。両者を一緒に置いてみる(e)とサイズの違いは一目瞭然だ。G.fornicatum(a, b)は頭部の径が12〜15mm、小さい方(c, d)は5〜8mmほどしかない。(c, d)はまるで(a, b)のミニチュアである。 頭部にカミソリで切り込みをいれて弾糸と胞子のプレパラートを作り両者を比較した。(f〜h)はG.fornicatum、(i, j)は一宮町で採取した小さな個体。両者とも骨格を成すような太めの弾糸とそれを取り巻く多数の細めの弾糸を持ち、隔壁などは無く厚膜で所々にわずかに分岐(g)が見られる。両者の胞子もサイズ・表面模様など有意差は感じられない。内皮の構造も比べてみたがほとんど同じで、内皮表面の様子、口縁盤の形なども同じと見なせそうだ。 小さなGeastrumは外見と光学顕微鏡レベルではG.forunicatumのように感じられるのだが、あるいはG.quadrifidumなのだろうか。もしそうなら、明瞭な柄をもち胞子も5μm以上あるはずだ。ちなみに、一宮町で採取した小さなものは、松林樹下に広く菌糸マットをつくりそこから発生している。そして外皮裂片の先端は菌糸マットに絡まっていた。雑記2003/2/12で取り上げたGeastrumはこれらとはまた別種のようである。 ちなみに国内の図鑑類ではこれらの小さなGeastrumの仲間はヒメカンムリツチガキ、あるいはヒメカンムリツチグリとしてGeastrum minus (Pers.) Fisch.の学名を与えているようである。 |
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