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一昨日栃木県の山中で出会ったオオズキンカブリタケ(a, b)はすっかり成長し立派な姿の個体が多数みられた。成菌だけを数えてみたが、88個ほど数えたあたりでいやになって止めた。他にもまだ数十個体の成菌と、頭だけの幼菌がいくつもあった。これらの中には負の重力屈性の実験のようなもの(b)や、柄の途中から枝分かれして頭部を二つもったもの(c)などもみられた。 このきのこの胞子は巨大なので、総合倍率40倍でも胞子の姿は明瞭に捉えられる。実体鏡や倍率の高いルーペなら現場でも胞子を見ることができるほどの大きさだ。メルツァー液で染めて対物20倍で子嚢と側糸をみた(d)。他のきのこの胞子との比較のために1000倍での姿も掲げてみた(e)。胞子のサイズはバラツキが非常に大きく、成熟胞子でも小さなものと大きなものとでは、長径で倍ほども違う。なお、カバーグラスに採取した胞子紋をそのままのドライマウント状態で、いつもと違ったフィルターを使って低倍率で覗いてみると美しい姿をみせてくれた(f)。 オオズキンカブリタケについては昨年4月にも観察しているので、その折のきのこの姿は雑記2002/4/18に、検鏡結果の一部は雑記2002/4/20でも取り上げた。 去る4月24日の「今日の雑記」で取り上げたチャワンタケについて、菌学教育研究会の布村公一氏からニセクリイロチャワンタケに似ているとのメールをいただいた。それによれば学名はPeziza badioconfusa Korf. であり、氏はかつてゴールデンウイークの頃に採取し神奈川キノコの会「くさびら」6号に投稿、それに対して大谷吉雄先生が和名をつけられたようである。標本はつくばの科学博物館に収納されているという。スイスの菌類図鑑に掲載されていないのは、ヨーロッパでは比較的採取例が少ないからかもしれない、アメリカでは多く採取されているようだ。 エリオ・シャクター著 くぼたのぞみ訳「キノコの不思議な世界」(青土社)の写真ページに「チャワンタケ属の一種」としてPeziza badioconfusa Korf.が掲載されているが、残念ながらあまり鮮明な写真ではない。また、検鏡結果などの図や写真をネット上で探して見たが明瞭なものはなく、詳細な記述も得られなかった。いくつかの信頼できる菌類関係誌の記述などと照合すると、これはニセクリイロチャワンタケ(Peziza badioconfusa Korf.)の可能性はかなり大きそうだ。 |
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