[標本番号:No.699 採集日:2009/07/31 採集地:福島県、福島市] [和名:ヒメミズゴケ 学名:Sphagnum fimbriatum]
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2009年9月1日(火) |
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(a, b) 採取標本、(c) 朔をつけていた、(d) 茎と枝、(e) 開出枝と下垂枝、(f) 茎と茎葉、(g) 茎葉、(h) 枝葉、(i) 茎の表皮、(j) 茎の横断面、(k) 枝の表皮、(l) 枝の横断面 |
7月31日に福島市の標高1680m付近の湿原で採集したミズゴケを観察した。現地でルーペを使い扇型で総状になった茎葉を確認したこと、さらに小さな黒褐色の朔をつけていることから、ヒメミズゴケだろうと推測していた。なお、この日撮影した蘚類は、現地生態写真を操作ミスで失っている(「たわごと」→「苦労して撮影した写真が・・・」)。
観察結果からヒメミズゴケ Sphagnum fimbriatum に間違いなさそうだ。すでに何度も観察覚書に掲載しているので(標本No.671、No.651、No.631、No.283、No.188)、ここでは文字による詳細な記述は避けて、おもに画像を主体に掲載することにした。これまで掲載した標本5点はすべて別の場所で採取したものだが、結果的にみな栃木県日光市産であった。
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(m) 茎葉、(n) 茎葉上半、(o) 茎葉背面上部、(p) 茎葉背面中央、(q) 茎葉の横断面、(r) 茎の表皮細胞と茎葉横断面、(s) 枝葉、(t) 枝葉背面上部、(u) 枝葉背面中央、(v) 枝葉腹面上部、(w) 枝葉腹面中央、(x) 枝葉横断面 |
ヒメミズゴケは比較的わかりやすいミズゴケだ。ルーペでみると、枝葉背面の細胞がギラギラと輝いてみえる。透明細胞の孔のためだろうか。また、茎葉が総状の扇形をしていることや小さな暗褐色の朔も特徴的だ。似たような繊細なミズゴケにワタミズゴケ S. tenellum があるが、こちらは朔の色が明褐色で、茎葉の先端が尖ってみえる。
枝葉の透明細胞に貫通する大きな孔や偽孔が多数あるせいだろうか、枝葉の横断面切り出しがちょっと面倒だった。なかなか思い通りに切り出せずに、実体鏡下で何枚も切り刻んで、比較的状態のよいものを撮影したが、きれいな切片は得られなかった(x)。確認するためだけであれば、横断面のごく一部に葉緑細胞が含まれていればよいが、見るに堪え得る画像を得るためには、切片の全体にわたって葉緑細胞の様子が分かる状態が好ましい。
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(y) 朔と偽足と雌苞葉、(z, aa) 偽足を包む雌苞葉、(ab, ac) 雌苞葉、(ad) 雌苞葉背面上部、(ae) 雌苞葉背面中央、(af) 雌苞葉背面下部、(ag) 朔、(ah) 朔表皮の気孔、(ai) 朔の横断面、(aj) 胞子 |
本標本の朔は完全に成熟していた。一部に短い偽足もあったが(y)、多くの偽足は8〜12mmほどの長さだった。雌苞葉は舌形で長さ朔を包み込むように密着し、開いて取り外すと、長方形気味の舌形で、長さ2〜3.5mmある。雌苞葉の透明細胞と葉緑細胞の様子は、茎葉や枝葉のそれとはかなり異なっている。
胞子の形について、標本No.671の覚書中に「胞子の形は四面体」と記したがこれは誤りで、中央部が凸状に膨らみ縁が薄い球状三角形だ。側面からみると、凸レンズのようにみえる。正面観と側面観がかなり異なる形状だ。水封せずにみると、また違った姿を見せてくれる。これに伴い、標本No.671には「修正と補足」を加えて訂正した。
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