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昔の検鏡写真をみると、杜撰なばかりではなく各種技術はかなり稚拙である。以下に、ほぼ同時期の「今日の雑記」を並べてみた。これらに掲載されている検鏡写真をみると、たしかに撮影技術やプレパラート作成技術に少しは進歩の跡がみられる。
(1) プレパラート作成の意図 何を、どこを観察するかでプレパラート作成の方法は変わる。ヒダ実質や側シスチジアなどの観察が目的ならば、なるべく薄い切片が必要だ。また、かさ表皮の観察が目的なら、切り出す方向に注意して薄目に切り出さなくてはならない。しかし、縁シスチジアを観察したり、担子器基部のクランプの有無を確認するのであれば、何もカミソリで薄い切片など切り出さなくてもよい。最初からヒダの一部をピンセットなどでつまみ取ってKOHでバラしてしまえばよい。 (2) 顕微鏡視野像の撮影 顕微鏡映像の撮影にはそれなりの難しさがある。きれいな視野像が見えたからといって、それをそのまま再現したような映像を得ることは意外とむつかしい。顕微鏡撮影にはそれなりの技術と慣れが必要とされる。また、フィルムであれデジタルであれ、カメラにも適不適がある。さらにデジカメによる撮影の場合には、画像ファイルに対するデジタル加工処理がともなう。その稚拙によっても映像は全く変わってしまう。 (3) 顕微鏡の整備状態 汚れたレンズ、傷ついたプリズム、狂った光軸、レンズのカビ、傷などは、見え具合に大きく影響する。しかし、多くの人は顕微鏡の状態には案外と無関心である。日常それなりに整備して、取扱いをていねいにするだけで、顕微鏡の性能と持ちはずいぶんと変わる。もちろん見える画像にも大きく影響する。スライドグラスやカバーグラスの汚れもくせ者だ。 (4) 対物レンズの性能 安い学習用顕微鏡と、研究用生物顕微鏡とでは、やはり見え方には大きな相違がある。さらに同じ生物用顕微鏡のレンズでも、アクロマートレンズと、セミアポ、アポクロマートレンズとでは、見え方に差がある。これは当然撮影画像にも大きく影響してくる。ただ、これは予算の問題ばかりではなく、接眼レンズ、コンデンサ等とのバランスの問題もある。 (5) 工夫と研究と慣れ 新鮮で状態のよい標本、よく整備された顕微鏡、良質の対物レンズ、撮影装置がそろっていても、きれいな顕微鏡画像が誰にでも撮れるとは限らない。つまるところは、それらに見合った良いプレパラートが作れなければ、決して鮮明な映像は得られない。良いプレパラートをつくるにはどうしたらよいか。また、鮮明できれいな検鏡写真を撮影するにはどうしたらよいか。それは、工夫と研究と慣れがすべてではないかと思う。 |
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