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[標本番号:No.0911 採集日:2010/05/02 採集地:岡山県、高梁市] [和名:キャラハゴケ属 学名:Taxiphyllum sp.] | |||||||||||||||||||
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5月2日に岡山県高梁市で石灰岩地のケヤキ樹幹に着生していた蘚類を採取した(alt 480m)。茎は匍い、葉には光沢があり、不規則に分枝する。一次茎は樹幹を匍い、二次茎からは大きめの葉をつけた枝と小さめの葉をつけた枝が伸びる。大きめの葉をつけた枝は、葉を含めて幅1.5〜2.0mmであるのに対して、小さめの葉をつけた枝は、葉を含めて、0.5〜1.2mmほどしかない。乾燥しても湿っていても、葉は枝に接することなく展開したまま。 枝葉は長さ1.1〜1.8mm、狭い卵形〜披針形で漸尖して細く伸び、葉上部の縁には微細な歯があり、浅く凹む。中肋はないか、あっても非常に短いものが二叉する。葉身細胞は線形で、長さ45〜70μm、幅4〜6μm、薄膜で平滑。葉基部の葉身細胞はやや幅広で短く、翼部はやや濃色であるが明瞭な区画は作らず方形〜矩形の細胞が見られる。茎や枝の横断面には、弱い中心束が見られるものがあるが、多くの枝では中心束はない。横断面で茎や枝の表皮細胞は小さく厚膜。無性芽や毛葉はなく、偽毛葉の有無や形は不明。 目安としてナガハシゴケ科 Sematophyllaceae としたが、まるで見当違いかもしれない。ツヤゴケ科 Entodontaceae、サナダゴケ科 Plagiotheciaceae、あるいはハイゴケ科 Hypnaceae かもしれない。平凡社図鑑、保育社図鑑、Noguchi(Part4 1991; Part5 1994)などを検討してみたが、属までたどり着けなかった。詳細に検討すればするほど分からなくなってしまった。
[修正と補足:2010.05.27]
コメントを受けて、あらためて平凡社図鑑にあたってみた。ナガハシゴケ科については「翼部の細胞はよく分化し,明瞭な区画をつくる」とある。そして、掲載種に本標本と符合する種はない。したがってナガハシゴケ科ではない。次にツヤゴケ科にあたると、翼部がよく分化するツヤゴケ属 Entodonと、あまり分化しないタチミツヤゴケ属 Orthothecium があり、タチミツヤゴケ属の2種については葉の形が異なる。したがって、ツヤゴケ科ではない。次に、サナダゴケ科にあたってみると、茎の横断面の様子と葉の付き方から、該当する属がない。残るのはハイゴケ科ということになる。 |
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