| 外蒴歯と内蒴歯の分離 |
はじめての試みは No.390(トヤマシノブゴケ)だったたが、実体鏡の下で脆い組織を解剖する作業の難しさを思い知らされた。下記の表には掲載しなかったが、No494(フジノマンネングサ)やNo.604(ヒメクジャクゴケ)では、両者の分離に失敗している。
| 標本番号 | No.618 | No.592 | No.591 | No.590 | No.390 |
| 種名 | コバノエゾシノブゴケ | トヤマシノブゴケ | ハネヒツジゴケ | フトリュウビゴケ | トヤマシノブゴケ |
| 蒴歯 | ) |
) |
) |
) |
) |
| 外蒴歯 | ) |
) |
) |
) |
) |
| 内蒴歯 | ) |
) |
) |
) |
) |
しかし、入手したのは2008年夏の頃だった(たわごと「ピンセットのこと」2008.12.9)。先細の精密作業用ピンセットを使うと、微細な葉の取り外しや、表裏のひっくり返しが急に楽になった。それもあって、ある時期から、取り外した茎葉や枝葉などを整列させることが急に楽になった(例：フトリュウビゴケの葉 No.590)。
){kind=link}
ところが、先細の精密ピンセットさえあれば、内外の蒴歯を分けられるかというと、そう簡単にはいかない。蒴歯の分離は乾燥したままの状態では難しい。触っただけでバラバラに崩れてしまうからだ。したがって、水で湿らせて弾力性を回復した状態で作業をすることになる。
外蒴歯はいわば湿度を利用したバイメタルだ。外蒴歯には、樹の幹や枝の上に生えて湿った時に開くタイプと、地上や乾燥した場所に生えて乾燥した時に開くタイプがある。湿った時に外蒴歯が開く蘚類では、そのまま慎重に作業をすればよい。しかし、湿ると外蒴歯が閉じてしまうタイプのものでは、何らかの工夫が必要となる。特定のグループに関してであってもかまわないが、定石のようなやり方でもあるのだろうか。