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それがベニタケの仲間であることはすぐにわかる。ではいったい何という種なのか、となると殆どお手上げになるのがこの属 Russula だ。肉眼的特徴に加えて、胞子やシスチジアの形、呈色反応などから、節や種の見当がつくものもあるが、多くはそれでもどうにもわからない。先日川越の保護林で採取した8種のベニタケ属のうちから、5つを取り出して並べてみた。やたらに画像が多くなるので、カサ表皮、シスチジアと担子器などの画像は省略した。
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メルツァー試薬はすべて同一条件で使ったのだが、(1)のキノコだけやや赤紫色を帯びた。3%KOHで胞子を封入し、10数秒後に水洗いしたのち、メルツァー液を注ぎ、多すぎる液を濾紙で吸い取った。水洗いは、スライドグラスを傾けカバーグラスの端に水を滴して反対側から濾紙で吸い取る。これを数回繰り返した。ポイントは水をごくごく少量ずつ注ぐこと。水洗いを省略すると酸(Melzer's Reagent)とアルカリ(KOH)による中和反応が起こって、白色の塩(エン)の結晶が生じてしまう。もっとも、KOHを使わず最初からメルツァー試薬で封入してもよい。 胞子表面の模様は(4)だけが他と顕著に異なり明瞭な網目がある。メルツァー試薬のかわりにイソジンなどのうがい薬を使うとベニタケ属やチチタケ属、ザラミノシメジ属の胞子表面では、有効に作用しない(雑記2004.8.4、同2003.12.19、同2009.11.22)。一般的にイソジンなどのヨードを含む代用品が役立つのは子嚢菌の場合だけだ(同2009.11.29、同2008.5.14、同2002.12.21)。
ヒダの断面を切り出して低倍率でみただけで、縁シスチジアや側シスチジアの存在がすぐにわかるケースもあるが、多くは、倍率を上げないとわかりにくい。倍率を上げても側シスチジアが確認できなければ、たいていは存在しないと考えて間違いないようだ。存在する場合には、そのシスチジア類がヒダ実質に由来するのか、子実下層に由来するのか、あるいは托実質に由来するのかを確認する必要がある。これを確認するにはヒダ切片の切り出しが必要となる。
呈色反応は、採取し持ち帰ったものに対して、硫酸鉄、グアヤク、フェノールの3種の試薬をヒダに滴下し、それぞれ1分後と60分後の色の変化をみた。カサ肉なり柄の内部組織に滴下した方がより適切な反応を得られるケースもある。一時間もテーブルに放置しておくと、どのキノコも暑さと湿度でたちまち傷みはじめた。硫酸鉄はどうやら有効期限を過ぎてしまっているようだ。フェノールもかなり怪しいが、まだ作り直していない(同2010.3.24)。 |
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