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2002年4月30日(火)
 
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 きのこ関連のいくつかの掲示板でウメウスフジフウセンタケ(Cortinarius prunicola Miyauchi et His.Kobayashi)が話題となっているようだ。
 このきのこは例年ハルシメジが最盛期を過ぎた頃に、ウメ樹下に多量に発生する。昨日も a, b のように梅畑に出ていたが、幼菌は全体が淡紫色を帯びている。ヒダ(c)は茶褐色だが幼時は淡紫色をしている。柄切断面(d)も軽く紫色を帯びる。若い菌(e)はハルシメジ(f)に似て無くもない。だからだろうか、ハルシメジと間違えて採取されることも多いようだ。また、ハルシメジ狩りに来て見つからず憂さ晴らしのためだろうか、よく踏みつぶされている姿をみる。このため、例年なかなかまともな姿の写真が撮れない。今回は珍しく踏みつぶされていない姿を撮影できた。
 このきのこは日本菌学会刊Mycoscience Vol39. No.3 p.333-335に詳細に(英文)紹介されている。ヒダ切片(g)を作り縁(h)をみると、胞子(i)は7〜9×5〜6.5μmほどで小さないぼ状突起をそなえている。担子器(j)、側シスチジア(k)は比較的小さく、菌糸にはクランプ(l)がある。なお f のハルシメジも昨日のものだ。

2002年4月29日(月)
 
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 奥多摩の御岳山を歩いてきた。この界隈はスギ植林ばかりで自然林がほとんど無い。でもモミ樹下には無数にマツカサチャワンタケ(a〜e)が見られる。よく見るととても愛らしい姿をしている。ロクショウグサレキンにおかされた桜(f)の多いことに驚いた。水辺には流れの中に小さな盤菌類(g)がでている。まだ微視的観察をしていないので科レベルもわからない。スギ斜面のあちこちに出ていたもろいきのこ(h, i)はモミウラモドキの仲間だろうが、傘表面に微細な毛が生えており、胞子(k)がとても小さい。カヤタケ型のきのこ(j)も道ばたの斜面にでているのだが、胞子(l)をみてもよくわからない。ヒダ切片はまだ見ていない。(k)、(l)のスケールはともに1目盛りが1μmだ。
 他に鳩ノ巣駅近くの梅林にはハルシメジやキクラゲ、線路脇の桜樹下にはアミガサタケがかなり見られた。ゴールデンウイークのせいで奥多摩も人出がとても多い。カメラが不調なためマニュアル固定焦点しか使えず撮影にはかなり難儀した一日だった。

2002年4月28日() [追補]
 
 埼玉きのこ研究会のホームページに興味深いコーナーが2つ新設された。
  「なんでも投稿掲示板」(2003年廃止)
  会員の発信ページ 横山元の今日もきのこ日和

 ここで「なんでも投稿掲示板」の方は投稿資格に制限がある。以下にこのコーナー開設の挨拶から、その趣旨に関わる部分を引用しておこう。
どちらも会員参加型という位置づけで設けたものですが、掲示板の方は、埼玉きのこ研究会会員並びに各地のきのこ会に所属する人に限って投稿を認めることにしました。さもないと、「このキノコ何ですか?」とか「キノコ狩りの仕方を教えて!」といった幼稚な書き込みに辟易する事態になりかねませんので、それを予防する意味での投稿資格制限ということです。きのこ研究家・愛好家同士のコミュニケーションの一助になればと思います。

2002年4月28日()
 
 デジカメの調子が非常に悪い。昨日CoolPix990で30枚ほど撮影したが、まともに写っているものが1枚もなかった。明るい黄褐色のツバナシフミズキタケが濃いピンク色に化けていた。さらに30cmほどの距離のアミガサタケはすべてピンぼけだった。以前にも時々発生しており、このため何度か修理に出しているが、完全には直っていないようだ。
 予備機のCoolPix950もかなり前から不調である。新品電池でも液晶画面が数秒で消えて真っ暗になり、マクロモードにするとオートフォーカスがいつまでも安定せず動きっぱなしとなる。このため950での撮影時はファインダーを使いマニュアルフォーカスである。ふだんはこれは無限遠(INF)に固定して100V電源につないで顕微鏡専用となっている。近接撮影に液晶画面が使えないのがつらいが、しばしはこの機械で乗り切るしかない。
 今日のCoolPix990の致命的症状の発生で、とうとう手持ちのすべてが不調となってしまった。いずれの機種も保証期間は終了しているので、修理に要する経費もバカにならない。新しいデジカメ購入を視野にいれなくてはならないのだろうか。

2002年4月27日()
 
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 4/23採取のコナガエノアカカゴタケ(k)を実体鏡と顕微鏡で覗いた。多量の砂にまみれて色すらはっきりしないので、まず水洗いをする。鮮やかな朱色が現れたところで、頭部の赤い籠の部分を切り開いて(a)残りの砂を落とした。籠の分岐部分(b)や腕(c)の部分はバネを折り畳んだような蛇腹構造をしている。頭部を支えている白い柄(d)はスッポンタケの柄とよく似ている。頭部を構成する細胞はジャガイモのような形(e)をしている。これをさらに拡大したのが(f)だ。胞子(g)はとても小さく4.5〜6×2〜3μmほどだが、日常使用している低解像度対物レンズでは詳細はよくわからない。こういうときはつくづくプランアポクロが欲しいと思うが、先立つものがない。スケールのひと目盛りは1μmである。この作業のあいだじゅう室内にはグレバの異臭が漂っていた。
 先日来気になっていた4/20採取のウラスジチャワンタケ(l) Helvella acetabulum (L.: Fr.) Quel. をやっと検鏡した。約1週間冷蔵庫の野菜籠にそのまま放り込んであったのだが比較的状態はよい。低倍率(h)でも子嚢胞子の姿がよくわかる。400倍にしてみると胞子(i)やら側糸(j)がよくわかる。胞子は12〜17×10〜13μmほどのサイズだ。これでやっと安心してサンプルを捨てられる。あやうく冷蔵庫の肥やしになるところだった。

2002年4月26日(金) [追補]--2002/04/24[補足]への訂正
 
 先に4月24日(水)[補足]で取り上げたきのこについて、アップ直後に何人もの方から、ハラタケ科ではなくミドリスギタケに間違いない、あるいは、フウセンタケ科チャツムタケ属の一種ではあるまいか、とご指摘を受けた。特に井口 潔氏からは、Gymnopilus luteofolius (Peck) Singer ではないかと、ていねいなご指導をいただいた。関東地方では、比較的普通に見出される菌らしく、ミドリスギタケ(Gymnopilus aeruginosus (Peck) Sing.)とよく似ているが別種ということである。「ハラタケ科と思えるきのこ」というのは明らかな間違いなので、ここで訂正しておこう。[補足]記述の下にもその旨を記述しておいた。ご指摘をくださった皆様、ありがとうございました。

2002年4月26日(金)
 
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 川口市やさいたま市では今年はまだ発生の確認をできないキツネノヤリタケであるが、群馬県の甘楽郡ではあちこちで出ている(a〜d)。このあたりはかつて養蚕が盛んだったために放置された桑畑が多数ある。一つの菌核から多数の子嚢果がでているもの(e, f)が多い。胞子嚢(g)の頂孔はメルツァーでは染まらない(h)。アミロイド反応を示さないことやその姿といい、キツネノヤリタケはキンカクキンの中では特異な存在だ。胞子サイズは10〜12×4〜6μmほどだ。同じ桑畑の下にはキツネノワン(i)が無数に出ているところもあった。ある場所では1平方メートルあたり250〜350個の子実体を数えた。これだけ出ていると、踏みつけにしないで歩くのはまず不可能だった。また一つの菌核から多数の子実体を発生させているものも多い(j, k)。さらに盤の径3.5〜4.5cmに及ぶ大きなものもある。近くにはムジナタケ(l)やらアシナガイタチタケなども見られた。

2002年4月25日(木)
 
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 川口市ではアミガサタケ(a〜c)はほとんど終わったものだとばかり思っていたら、まだあちこちに出ている。そしてそのすぐ近くには食べ頃(?)のヒトヨタケ(d)も多数でていた。ヒトヨタケはアルコールとの相性が悪いことで有名である。アルコールを飲む7,8時間も前にヒトヨタケを食べても悪酔いすることがあるという。また、飲酒後半日以上経過してからヒトヨタケを食べて2日酔い症状が出ることもあるという。
 過去にも何度かやってみてはいるが、昨夜夕食時に一株のヒトヨタケを肴に晩酌をした。まだヒダが真黒になる前の比較的若い菌を塩コショウで味付けして炒めた。少量のアルコールですぐに酔いが回ってきた。アミガサタケの顕微鏡遊びはその結果だ。なかなか思い通りの切片が切り出せない。そして少ししつこくなっている。
 アミガサタケの切片を作り、低倍率(e)で覗いた後、胞子嚢(f)やら側糸(g)を覗いてから、胞子(h)だけを取り出してのぞいた。胞子の長径の両端に見えるモヤモヤっとした部分(小さな油球群)だが、これは個体によって見えたり見えなかったりする。図鑑類をみても明瞭に描かれたものと全く描かれていないものがある。さらに倍率を上げても(i)、影像は変わらない。胞子だけを碁石のように並べてみたのが(j)だ。こういった遊びをすること自体、やはりヒトヨタケのアルコール効果だろうか。写真の(i)と(j)は全く不要だ。やはりヒトヨタケを酒の肴にすることは止めた方がよさそうだ。

2002年4月24日(水)
[補足]

 
(o)
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(u)
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(y)
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(z)
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 九十九里浜に観察に出向いた折り(4/23)に、途中で出会ったきのこについての補足だ。車を走らせていると、道脇の堆肥からハラタケ科と思えるきのこ(o〜s)が無数に群生していた。とてもよく目立つので、何ヶ所にも採取したあとがあった。車窓から垣間見たときはオニタケかツブカラカサタケのように見えたが、近寄ってよく見ると様子が違っていた。特にこれといった特徴的な臭いはない。(o)は成菌、(p)は幼菌、(q, r)は若い菌、(s)は成菌の切断面、胞子紋(t)は淡い茶褐色だ。
 ヒダ切片(u)を作り、縁を覗くと(v)担子器(w)や色素をもった小さなシスチジア(x)がみえる。傘表面の組織(y)は、傘表面に対して組織の要素が平行、つまりいわゆるcutis構造をしている。ヒダや柄などにクランプがあり、胞子(z)は微細なイボをもち7〜9.5×5〜7.5μmほどだ。
このきのこはハラタケ科ではなくフウセンタケ科チャツムタケ属(Gymnopilus)のもので Gymnopilus luteofolius (Peck) Singer のようだ(2002/04/26 加筆)。

2002年4月24日(水)
 
(a)
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 昨日、千葉県九十九里浜と茨城県鹿島灘の浜辺を歩いてきた。干からびてはいたがコナガエノアカカゴタケ(a〜d)を九十九里浜で4個体確認できた。いずれも3,4日前に発生した個体のようだ。これは、4月にも発生するということを物語っている。根状菌子束の先をたどって掘っていくと、コウボウムギの枯穂や枯根に続いていた。
 海辺の近くのスダジイにはカンゾウタケ(e, f)の幼菌が見られたが、まだ大きな成菌はなかった。都内の方が成長が早いようだ。若いスダジイの斜面ではカシタケ(g)の最後の姿が見られたが、今シーズンはもう終わりのようだ。同じく海辺近くのタブの木にはマユハキタケ(h)が見られた。海辺の近くでもキクラゲ(i)やアミスギタケ(j)は至るところにあった。驚いたのは海辺の砂浜からもアミスギタケ(k, l)が出ていたことだった。柄の先を掘ってみると、砂に埋まった流木に続いていた。

2002年4月23日(火)
 
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 都内でもカンゾウタケが出てきた。予想通り今年は発生がかなり早い。昨日の夕方、千駄ヶ谷駅から神宮球場、明治神宮と通って参宮橋駅に出た。途中の神宮外苑と明治神宮では何本もの樹木からカンゾウタケ(a〜e)が発生していた。既に暗かったので芳しい写真は撮れなかったが、(a)は暗い洞の中に、(e)は高さ4メートルほどの場所にでていたものだ。(a)を引っ張り出して撮影したのが(b)で、裏面が(c)、切断面が(d)である。暗かったので(e)はフラッシュをたいての撮影だが、樹木のウロに大きめのゴルフボールを埋め込んだような姿だった。都内にはスダジイがとても多いので、カンゾウタケはあちこちで観察できるが、ゴールデンウィーク前に成菌を見ることは珍しい。神宮球場周辺にはキクラゲ(f)も多数みられた。
 明治神宮の森にはアミヒラタケ(g〜l)らしいきのこが多数見られた。それらのうちここでは、傘の径25cm以上(g, h)で大きく波うった成菌、10cm前後のやや若い菌(i, j)、5cmほどの幼菌(k, l)の3個体を取り上げてみた。それぞれの裏面を見ると成長の程度がよくわかった。これらはタマチョレイタケやハチノスタケの疑いもあるが、とりあえずアミヒラタケとして扱っておく。

2002年4月22日(月)
 
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 シロフクロタケというと、ただ白いだけでドテッと大きくて姿が単調なので被写体としては面白みに欠けると、しばしば聞く。しかし顕微鏡の下の世界はどうなのだろう。
 早朝まだ暗いうちに見沼まで出向いてシロフクロタケを持ち帰った。まずヒダ切片を低倍率(50倍)でのぞくと(a)のように逆散開型だった。一段倍率を上げる(b)と子実層托実質がより明瞭にわかる。もう一段倍率を上げる(c)と担子器や側シスチジアをなんとかみつけることができる 。側シスチジア(d, e)は案外小さく数もとても少ない。担子器(f, g)を異なる倍率でみたが、あまり倍率を上げると2担子型なのか4担子型なのかといったようなことは、一目ではわからなくなる。このシロフクロタケは4担子型だ。胞子(h)は13〜15.5×7.5〜9.5μmほどのサイズだった。おもしろいことにフクロタケの仲間の多くは、ヒダは白色をしていても胞子紋(i)は淡い赤褐色からピンク系の色をしている。
 ここでは取り上げなか ったが、傘の肉、傘の表面構造、柄の肉、柄の表面などからも切片をつくって観察してみた。シロフクロタケは顕微鏡の切片作りなどの練習にはとても適した素材だと思う。きのこ自体がかなりしっかりしており、ピスをうまく使えなくても比較的薄い切片が作りやすい。また傘・柄ともに表皮がすんなり剥がれるので、この切片もとても楽に作れる。そして、低倍率でも担子器やら組織構造が明瞭にわかる。ヒトヨタケ科の溶けるきのこなどに比べたら雲泥の差だ。

2002年4月21日()
 
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 昨日は菌懇会のゼミ「ホウキタケ類の最近の分類−諸外国の研究結果をふまえて」に出席した。演者は仙台の安藤洋子氏で、米国オレゴン大学チームによる分子系統解析に基づく研究成果などをベースに、スライドを交えての楽しい勉強会だった。
 午前中にいつもの場所を観察して歩いた。1週間前には一面に出ていたというハルシメジ(a)はわずかに死角位置の草むらなどに少量残っているばかりだった。アミガサタケ(b)は十数個が斜面にでていたがいずれも小さい。ウラスジチャワンタケ(c, d)は例年より発生数が多いようだ。他にも新鮮なチャワンタケ類(e)や、落葉上に径0.2〜0.5mmほどの小さな子嚢菌がでていた。他にもマツオウジやらPsathyrella sp.など、思いがけず考えていた以上に多くのきのこをみることができた。

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