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2002年10月31日(木)
 
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  上州武尊の標高1500メートルあたりで多数発生していた盤菌(a)は、何の疑問も無くムラサキゴムタケだろうと思っていた。やや若い菌と成菌を持ち帰ったので、すぐに切片(b)を切り出して少し倍率を上げてみた(c)。さらに倍率を上げて子嚢(d)を見て、ここまでの観察からほぼムラサキゴムタケに間違いなかろうと判断した。念のためにメルツァー液をたらすと子嚢先端が綺麗にアミロイド反応を示した(e)。胞子(f)をよく見ると4〜5つの隔壁を持つようにもみえる。
 しかし、持ち帰った成菌は完全には熟していなかった。小さな未熟胞子ばかりを格納した子嚢がやたらに多い。最初に見たときにムラサキゴムタケだろうと思い込んでしまったために、十分に熟した個体を採取しなかったことが悔やまれる。成熟した胞子に見られる明瞭な隔壁や胞子表面に付着する分生子、これらを確認できないと、この子嚢菌がムラサキゴムタケであるとの結論は出せない。結局この盤菌はムラサキゴムタケの可能性が高いが違うかもしれない、という結論に落ちてしまった。したがって、これまた「キノコのフォトアルバム」には追加できない。
 つい習慣でバイク置き場に行ってみた。そこに馴染みのバイクは無い。そうだ、廃車にしたんだ...。15年以上も親しんできただけに、淋しさをしみじみと感じる。自宅から自転車でちょこっと行ってこられる距離に観察できる自然環境はない。

2002年10月30日(水)
 
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(f)
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 群馬県の山間部はもう初冬の姿だった。標高1200〜1500メートル周辺を歩いてきた。途中のサービスエリアにはシロフクロタケ(a)なども出ていたが、山の上はクリタケ(b)もナメコも幼菌ばかりだった。土日にすっかり刈り取られてしまったのだろう、ナメコは小さな幼菌ばかりしか残っていなかった。いずれも傘径1〜3ミリほどの小さなものばかりだが、2週間もすれば大きくなることだろう。その頃には道路も閉鎖されて訪れる人もほとんどない。
 山の上は終日零度以下でブナハリタケ(d)、ニカワチャワンタケ(e)などはすっかり凍っている。カラマツシメジ(c)もほとんど霜と雪にやられて少ししか残っていなかった。ふしぎとキヌメリガサに全く会わなかった。こんなことは初めてだ。ムラサキゴムタケ(f)のように見える子嚢菌をはじめ、盤菌類だけは多くの種類が見られた。すっかり冷え切ってしまったので、最後は利根村にできたばかりの温泉保養施設で体を温め一眠りしてから帰宅した。

2002年10月29日(火)
 
 早朝キノコ観察の足だったバイクを廃車にした。HONDAのTLR200というトライアルバイクで、長いこと愛用していたものだ。片道500Kmを自走してトライアル競技会に参加したり、雪の山を特別注文のスパイクタイヤで山頂まで登ったこともあった。きのこ観察ではこのバイクはいろいろ役に立ってくれたが、長い年月の酷使の中で老朽化も進んだ。さらに両手指先もさらに悪化してバイクの正確な操作も不可能となってきた。
 「足」を失ってしまったので、今朝は先に採取したコナガエノアカカゴタケを顕微鏡で観察した。
 
 
 
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(f)
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  コナガエノアカカゴタケの卵(a)を地中から掘り出してみると長い根状菌糸束が砂地深く延びている。その先端はコウボウムギ、ハマニンニクなどのイネ科植物の腐朽根などにつながっていた。砂を洗い落として縦に切断(b)してみると、柄と頭部網目部分がコンパクトに折りたたまれ、全体がゼラチン質で包まれている。今度はこれを水平方向に切断(c)してみた。
 成菌では担子器をみることはできないので、卵の中から組織を取り出した。透明で薄膜の担子器(d, e)が多数密集している。一つの担子器には4〜8つの胞子がついている。最初水でマウント(d)したのち、メルツァー液で染色してみた(e)。メルツァーでは担子器はうまく染まらない。胞子(f)はカゴタケ属やアカカゴタケ属の常として、小さくて平滑で単調な姿をしている。

2002年10月28日(月)
 
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  いつも見ているのに名前がわからないきのこがある。今朝もまたそういったきのこの一つが多数発生していた(a〜d)。あまりにも暗くて撮影できないので10月26日に撮影した同種のキノコを掲げた。これらはさいたま市の秋ヶ瀬公園で毎年9〜11月頃に多数発生する。つい最近の9/29 g, h9/30 i〜pの「今日の雑記」でも取り上げたが、いまだに同定できていない。識者からは真剣に取り組んでいないからだと謗られるが、昨年来いまだに素性がわかっていない。胞子紋シスチジア、ヒダや傘の組織構造などはこれまで何度も見てきた。今朝も胞子(e)、担子器(f)をあらためて覗いてみたが、以前見たものと同じである。ツバナシフミズキタケなどに近いフミヅキタケ属のきのこだと思うのだが、この判断もかなりあやしい。傘表面(c)は際立った特徴をもっている。これがどうしてわからないのだろうか、つくづく情けなくなってくる。そういえば、昨日は菌懇会の例会でやや白っぽいムラサキシメジをフウセンタケと間違えてしまった。

2002年10月27日()
 
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(i)
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  先日海辺の砂浜で見たキツネノタイマツをパーツ毎に分けて観察した。まず若い卵を縦切り(a)と横切り(b)にしてみた。外側を厚くゼラチン質が被っている。後にくさい匂いを発することになるグレバはまるでマシュマロである。次に柄を上部・中部・下部で輪切りにしてみた(c)。頭部のグレバを洗い流して見ると真っ赤な三角頭巾(d)をかぶっていた。その頭巾を広げてみる(e)と内部の柄も真っ赤だ。その柄上部を輪切り(f)にしてみた。
 一つの担子器(g, h)には4〜8つの胞子がついている。担子器は薄く透明で成菌になると消失してしまう。だから成菌の頭部をいくら捜してみても担子器はみつからない。これを見ようと思ったらかならず幼菌(卵)を採取してこなければならない。それもなるべく若い真っ白なものでないと担子器はすでにない。染色してみると担子器の姿が明瞭に見えてわかりやすいが、今回は水でマウントしているのでわかりにくくなってしまった。この仲間の胞子(i)はみな同じような形をしており大きさも似たり寄ったりだ。

2002年10月26日()
 
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  海辺の砂浜からキツネノタイマツ(a〜c)が出ていることは驚きだった。これは普通のキツネノタイマツと同一種なのだろうか。何本か見たがいずれも柄の部分の赤みがとても強い。写真のものは卵の部分もいれると20cm以上の高さがあったが、地上部は8〜10cmほどだ。根元まで掘ってみると(b)、すぐ脇にもう一つ卵がついていた。(c)の卵は3時間後にも頭を出さなかった。
 スナヤマチャワンタケ(c)も出始めたが、まだ発生数は少なかった。砂浜には他にもアセタケ属、ヒトヨタケ属、ナヨタケ属、ニセホウライタケ属、チャダイゴケ科のキノコが何種類もでていた。松林の縁にはエノキタケ(e)、オオヒメノカサ(f)、ナラタケ属、ナカグロモリノカサ、クロハツ、チチアワタケ、アミタケ、ヌメリイグチなども見られた。
 松林に入ると今年もマツバハリタケ(g, h)がいくつもみられた。ヤグラタケ(i, j)もいまだにかなりの数がみられた。松林で出会った地元の人によれば、何人もが今年はシモコシの発生がかなり悪いという。昨年までいつも出会うシロにもいってみたが、ここでも一つもみなかった。マツバハリタケは2つほど持ち帰ったので、付け焼きにして酒の肴にした。おいしいきのこだ。

2002年10月25日(金)
 
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  海辺に砂地生きのこの定点観察に行ってきた。いつもどおり、千葉県九十九里浜の南の果てから北の果てまで、そして茨城県波崎町の浜辺を回ってきた。観察ポイントは計6ヶ所ほどだが、走行距離もかなりあるので、結局終日費やしてしまった。今年の6月以来先月まで4ヶ月全く姿を見なかったコナガエノアカカゴタケだが、計184個体以上も発生しているのを確認してきた。これまでは一日で20個体以上見たことは無かったのであまりの多さに驚いた。さらに、50個以上の卵の存在も確認できた。この分だとあと1週間は次々に発生しそうだ。
 昨年11月に初めて出会ってからほぼ3週間ごとにずっと海辺の観察を続けてきたが、今回のように多数の個体が発生するとは考えてもいなかった。強い風雨の中での撮影はひどく難儀したがどうやら200枚以上の映像を得ることができた。今日取り上げるのはそのうちの一部である。今にも頭を出しそうな卵(j)にめぼしをつけて、他の個体を観察しながら、2時間後(k)、3時間後(l)を観察してみたり、双子の卵(g)を掘り出し二つに分け(h)、そのうちの一つを切断(i)してみたりしてじっくり観察をすることができた。

2002年10月24日(木)
 
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  早朝の雨の中、さいたま市の公園を2ヶ所歩いてきた。相変わらずヒメフクロタケ(a, b)はよく出ている。成菌(a)、老菌(b)ともに傘径10〜20mmほどで普通サイズのものばかりだ。図鑑では「ヒダはやや疎」となっているが、ここで見るものには、やや疎なものからやや密なものまでいろいろある。こんな季節にもタマキクラゲ(c)がでている。草むら全体が異様な臭気を発しているので、草をかき分けてみると100本ほどのサンコタケ(d, e)が群生していた。ムジナタケ(f, g)、コガネタケ(h)、ツチヒラタケ(i)、オオナヨタケ(j)も出ていたが、例年なら出ているはずのモエギタケやらスッポンタケは全くみられなかった。
 10/22i〜kのナヨタケ属のきのこの成菌がないかとかなり探してみたが、やはり小さな幼菌が数個あっただけだった。ただ、この幼菌には甘い臭いが全くない。だからPsathyrella sacchariolensの可能性はないだろう。
 ※ヒメフクロタケはモリノコフクロタケの誤り(2002/11/12補足修正)

2002年10月23日(水)
 
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  このところ公園のウッドチップから発生しているのをしばしばみるキノコがいくつかある。これまでは特に注意することもなく通り過ぎてきたのだが、あまりにしばしば見かけるので、昨日はついにそのうちの一つを数個体持ち帰った。みたところクリタケ属のようにみえる(a〜c)。胞子紋(d)はスライドグラスに傘を伏せて1時間ほど放置したものだ。
 胞子(e)はカバーグラスに5分間ほど傘を伏せてとったものを見た。ヒダ切片(f)を切り出し先端部分(g)を拡大すると、細長い縁シスチジア(h)が密集している。担子器(i)やヒダ実質などを見た後、10%KOHに浸してから再び覗いてみると、クリソシスチジア(黄金シスチジア)が明瞭に多数浮かび上がってきた(j)。
 これだけからでは種の決定はできそうにないが、どうやらニガクリタケモドキやアシボソクリタケなどに近い種類のきのこのようだ。なお、齧ってみたところ苦味は全くない。また写真では傘にぬめりがあるかのように見えるが、これは早朝の濡れた状態の中で撮影したからだ。
 昨日の「今日の雑記」でとりあげた傘がボサボサのきのこ(10/22i〜k)はナヨタケ属のきのこで、Psathyrella pervelataあるいはP. sacchariolensのようだ。大ちゃん(大作晃一氏)からの指摘にしたがってスイスの図鑑を見ると、第4巻にそっくりな写真が掲載されていた。記述を見ると間違いなさそうだが幼菌だけしかなかったので、どちらなのかあるいはそれらとは別種なのかは定かではない。今度秋ヶ瀬公園に行ったら再び注意してみてみよう。
 昨日は沢田画伯のボタニカルアート展「不思議なキノコ」の最終日だったので、朝一番に顔を出してきた。展示作品数こそ少ないが、とても印象深い画が並んでいた。特にキイロスズメバチ(?)が多数群れているシラタマタケの画が素晴らしかった。

2002年10月22日(火)
 
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  秋ヶ瀬公園には数種類のフクロタケ属のきのこが出ていた。昨日いくつも出会ったのはヒメフクロタケ(a, b)だった。写真のものは傘径が8cmほどもあるとても大きなものだった。最初見たとき、ヒメフクロタケにしてはあまりにも大きいので別種のきのこだと思った。しかし傘表皮(c)、柄の根元のツボ(d)などから間違いなさそうだった。
 念のために検鏡してみると、胞子(e)サイズなどは問題ない。ヒダ切片(f)をよく見ると側シスチジアが見える。さらに拡大してみると、縁シスチジア(g)など同じような形をしている。担子器(h)はぎっしりと綺麗にならんでいた。
 奇妙な姿のきのこ(i, j)が出ていた。最初見たときキノコとは思えなかった。綿くずか、あるいは植物の花が落下して転がっているのかと思った。持ち帰って半日冷蔵庫の野菜かごに放置したところ、柄が2倍ほどの長さに伸びていた。これを切断してみると(k)ヒダを持ったきのこだった。何かの幼菌なのだろうが、胞子(l)もすでにできあがっていた。
 ※ヒメフクロタケはモリノコフクロタケの誤り(2002/11/12補足修正)

2002年10月21日(月)
 
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  昨日は長女と一緒に石裂山にハイキングに行く予定にしていたが、天候が芳しくないので中止して、さいたま市の秋ヶ瀬公園に行ってみた。1週間ほど前にはほとんどきのこが無かったのだが、いろいろなきのこが見られた。
 ヒラタケ(a)、アラゲキクラゲ(b)、コザラミノシメジ(c)、ハタケシメジ、モエギタケ、サケツバタケ、ハタケチャダイゴケ(d)はあちこちで出会った。ナヨタケ属とコガサタケ属のきのこがいろいろ出ていたが、姿だけからは種名がわからないものばかりだった。それらのうち数種類を検鏡して検索表をたどってみたが、どうやらオオナヨタケ(e〜g)などいくつかの種だけが判明した。
 ここではオオナヨタケだけをとりあげた。胞子紋(h)はスライドグラスに直接傘を伏せて1時間ほど放置したものだ。胞子(i)は意外と大きい。他にも担子器(j)、縁シスチジア(k)、側シスチジア、クランプの有無などを観察した。傘表皮には茶褐色の細い毛が生えている(l)。他のナヨタケ属の検鏡結果は後日とりあげることになるかもしれない。
 「キノコのフォトアルバム」のコウボウフデニカワウロコタケの2本に随想を追加した。残りはまだ500種近くあるので、すべてのきのこに文章を書き終わるにはいつのことになるのやら皆目検討もつかない。

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