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昨日は仕事で外出がままならなかったので、合間に顕微鏡を使ってここ数日の間に採取したキノコを覗いて楽しんだ。 エツキクロコップタケは十分に熟していたので、切り出した切片(a)を見ただけでも胞子嚢には胞子が満ちている。胞子嚢(b)、側糸(c)、厚膜の子嚢先端付近の胞子(d)。胞子サイズは30〜35×15〜18μmでとても大きい。 ミズベノニセズキンタケは切片(e)を切り出し、拡大すると(f)側糸と胞子嚢がみえた。胞子は10〜14×4.5〜5.5μmほどだった。 |
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ヒロハシデチチタケは低倍率でもシスチジア(h)がよくわかる。メルツァーで染色すると胞子表面の模様(i)が浮かんでくる。胞子はほぼ球形で6〜9μm。担子器(j)は案外大きい。チチタケの仲間のキノコは、ヒダが比較的しっかりしているので切片(g)を作るのは楽だが、乳液のせいでカミソリがすぐに切れなくなってしまう。顕微鏡で油浸状態にしたままメルツァーで染色してしまったので、全体が見苦しいほど黄褐色を帯びてしまった。 |
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カンゾウタケの組織は概ね縦に綺麗に並んでおり(k)、各所にクランプ(l)をもっている。担子器(m, n)も胞子(o)も案外小さい。胞子は3.5〜4.5×3〜3.5μmほどだ。図鑑類には「卵形」との記述もあるがちょっと違う。赤い色の部分(p)は色素を充満した細長い細胞からなっている。 | |||||||
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日光で17日に採取してきたオオシャグマタケを顕微鏡で覗いてみた。例によって切片(a)を切り出して、胞子嚢(b)、側糸(c)、胞子(d)などを観察した。側糸の中には色素を帯びた粒子のようなものが多数含まれている。胞子は十分に熟していたので、表面に焦点(e)を合わせると模様が見えた。胞子がかなり大きいので、輪郭に焦点(f)をあわせても模様は全く見えない。(e, f)の胞子は一つが未熟のようだったが、全般的には十分に熟していた。自宅で熟させた個体では、胞子表面の模様はできてこなかったが、天然に熟したものでは表面模様は明瞭だった。胞子サイズなどは図鑑にあるとおりの範囲にあった。 |
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秋ヶ瀬公園で早朝採取したアラゲカワキタケをミクロの目でみた。ヒダ切片を低倍率(g)でみただけでも顕著なシスチジアがみえる。倍率をあげるとシスチジア(h)はさらに明瞭になった。もっと倍率を上げると(i)厚膜シスチジアの様子がよくわかる 。縁シスチジアも側シスチジアも同じような形をしている。胞子(j)はとても小さくてな かなかはっきり見えない。明暗がはっきりしないのでメルツァー液で染めてみたら(k)か なりはっきり形を捉えることができたが、こんどは撮影がうまく行かなかった。カメラのせいにはしたくないが、こう不調続きだといい加減いやになる。しかし概ね胞子のサイズはわかるだろう。ここでのスケールの1目盛りは1μmだ。新鮮な若々しい個体から採った胞子紋(l)はたっぷり胞子が堆積してクリーム色をしていた。一方、スライドグラスに採った胞子紋からは、その色はわかりにくかった。胞子紋の色を見ようと思えばやはり白い紙の上にとったものが一番だ。 | |||||||
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昨日の日光は摂氏3〜5度で氷雨の降る寒い一日だった。震えながら傘をさして歩くと、アミガサタケ(a, b)、タモギタケ(c, d)、エツキクロコップタケ(e, f)、オオシャグマタケ、ミズベノニセズキンタケ(g〜i)、コチャダイゴケ(j)、ズキンタケの仲間(k)、アシナガタケの仲間(l)、シイタケなどに出会った。ホシアンズタケ、ヒロメノトガリアミガサタケ、キイロスッポンタケ、シロキツネノサカズキなどはまだ出ていなかった。b のアミガサタケは紫色を帯びていた。帰宅後、シイタケ、アミガサタケ、タモギタケなどは夕食のキノコ鍋になった。 地元の人達の話では、この地域では5月に入って初めての雨だったという。さらに4月後半からずっと気温が異常に低い日が続いているとのことだった。 |
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久しぶりに昨日の早朝、見沼地区に行ってみた。ツブエノシメジ(a, b)、コキララタケ(c)、ビロードヒトヨタケ(d)、ワタヒトヨタケ(e)、ザラエノヒトヨタケ(f)、ネナガノヒトヨタケ、クズヒトヨタケ、キオキナタケ、シロフクロタケ、ツバナシフミズキタケ、ウスベニイタチタケ、サンコタケ、アラゲキクラゲなどがでている。ハタケチャダイゴケの幼菌(l)もあちこちに顔を出し始めた。 アンモニア菌として知られるザラミノヒトヨタケ(g〜i)が出てきた。焦点深度の関係で胞子の輪郭と表面を同時に撮影できないので、輪郭に焦点(j)をあわせたものと、表面に焦点(k)をあわせたものを掲げた。 昨日夕方やっと1台のデジカメが修理から戻ってきたので、さらに別の1台を修理にだした。それぞれ、保証期間中だけでも何度も修理に出したが、もはや保証期間は過ぎてしまっている。今後は迂闊に修理にだすことができない。いずれのデジカメも雨の中でビショビショに濡らしてしまったことに原因があるようだ。これ以降ずっと何らかの不調や故障が続いていて、何度修理に出してもすぐにまた別の故障が現れる。やはり新たなデジカメを購入することが緊急の課題となった。 |
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川越市の保護林ではヒロハシデチチタケ(a〜c)が最盛期だ。若いシデの樹下をよく見ると5本に1本はこのきのこが出ている。松の切り株にはあちこちでヒトクチタケ(d)がついていた。アミスギタケ(e)の出ている落枝はいたるところに見られる。腐朽材にはヒメカバイロタケ(f)ばかりがよく目立つ。他にはアセタケ類、イタチタケ、ムジナタケ、アラゲキクラゲ、キクラゲ、ヒメキクラゲ、タマキクラゲなどが目立った。でも、総じてまだきのこの影は薄い。 picoさんの掲示板「Bigginer's Imgbbs」でオオシャグマタケの話題がでていたので、以下の項目を急遽追加することにした。暗い中で電灯の明かりを頼りにプランタのオオシャグマ(g)を撮影した。白くて太い柄は土の中にある。 |
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5月6日に日光から持ち帰ったオオシャグマタケ(z)は未熟個体で胞子はできていなかった。これを自宅プランターに据えて(g)しばらく水分も補給していたが、ようやく胞子がかなり育ってきた。熟していると思えそうな部分から切片(h)を切り出し倍率を上げてみると、数こそ少ないが胞子を抱えた胞子嚢(i)が見つかった。さらに倍率を上げると(j)、胞子の両端に嘴状突起ができはじめている。ただ、サイズはまだ若干小さめ(k)だ(スケールの目盛りは1μm)。胞子表面の網目模様はまだ十分にできあがっていなかった。このオオシャグマタケは雑菌に侵され始めたので、この段階で処分することにした。 | |||||||
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今日取り上げたのは、13日に海辺の定点観測をした折りに出会った多くのきのこの一部だ。九十九里の砂浜では、ハマニンニクの根元に小さな淡褐色のヒダを持ったきのこ(m)が多数発生していた。掘り出してみると(n)若いハマニンニクの葉の付け根付近から束生していた。砂を洗い流してみる(o)と、ハマニンニクから支枝がでてその先端がきのこになっているかのような異様な姿がよくわかる。顕微鏡で覗いてみると担子器は無数にあるものの、胞子の数はとても少なかった。傘を一晩放置したが胞子紋はほとんど採れなかった。見た目は成菌そのものなのだが、やはりまだ幼菌なのだろうか。 スナジクズタケ(p)も出始めた。傘表面の砂を洗い流した姿(q)、裏面(r)だ。海辺近くの薄暗いスダジイの森にはカンゾウタケ(s, t)が大きくなっていた。裏面(u)、切断面(v)だ。松混じりのコナラ林にはアマタケ(w, x)も多数見られた。スナヤマチャワンタケはまだこの時期には全くでていない。 |
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ハマニンニクの根元にでるきのこ(m)のミクロの姿をみた。傘の径3〜8mmほどなのでなるべく大きなものからヒダを1枚切り出して切片(a)を作った。縁シスチジア(b)、側シスチジア(c)を低倍率で覗いたあと、担子器(d)、側シスチジア(e)を高倍率で観察した。数少ない胞子(f)のスケールは1目盛りが1μmだ。砂を沢山噛んでいるのでそのまま切り出すとカミソリがすぐにダメになる。しかし、水流を使って砂を洗い落とすと、胞子やヒダ表皮構造物も一緒に壊してしまう。きのこの表面についた砂が水流でくるくる回ってヤスリのような役割をする。結局は実体鏡の下でピンセットを使いひとつひとつ砂粒を取り除くしかなかった。それでも微細な砂粒はとりきれない。砂浜のきのこには毎回難儀する。でも砂山チャワンタケやスナジクズタケよりははるかに楽だった。 | |||||||||||||
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昨日浜辺の定点観測に行って来た。例によって千葉県の九十九里浜と茨城県の鹿島灘の浜を歩いてきた。主たる観察目的はコナガエノアカカゴタケ(Simblum sphaerocephalum)であり、5ヵ所ほどの浜をじっくり歩いていくつかの新鮮な個体にあうことができた。 今日はこの日であったいくつかの個体のみを取り上げることにする。砂の中から顔を出しているときの姿(a)と砂を洗い流された姿(b)、及びその頭部(c)。別の場所で、やはり自然状態の姿(d)と砂を取り去った姿(e)、その頭部(f)。さらに別の場所では、砂を半分掘ってみた(g)。掘り出して見た姿(h, i)。3つほどを並べてみたもの(j)、それらの頭部(k)。1週間ほど前に出たと思えるひからびた個体をいくつか集めてみたもの(l)。凍結乾燥にでもしないかぎり、ふつうに乾燥標本にすると皆、こんな風になってしまう。 ここしばらくの間、程良く雨が降っていたので、自然状態でもかなり美しい姿を保っていてくれた。このような珍しいとされるきのこに多く出会えるのはうれしいのだが、車の中で迂闊に採取ケースの蓋を開けると悲惨である。グレバのすさまじい臭いが一面に漂い、窓を開けてもなかなか匂いは消えてくれない。なお、今回採取の個体はすべて吉見昭一先生行きと決まった。 |
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[その2] |
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昨日は菌懇会の例会があったので川崎市の緑地まで行って来た。今年もまたヒロハシデチチタケ(a, b)が昨年と同じ場所にでていた。c は辛い乳液を出したヒダ。ウラベニガサ(d)、ハルシメジ(f)はあちこちにでていた。コツブヒメヒガサヒトヨタケによく似た菌(e)も梅林樹下に出ていた。アオキの朽葉からはとても小さなアオキオチバタケMarasmius aucubae(g)が繊細な姿をみせてくれた。 外来樹のモミジバフウ(Liquidambar styraciflua)の実からはフウノミタケ(h〜j)やクロサイワイタケ科の細長いきのこ(Xylaria persicaria)が無数に発生していてみごとだった。指先で軽く触れると一斉に胞子を放出した。サクランボの実からも小さなチャワンタケ(l)がでているのが観察された。この写真はやや薄暗くなっていたので室内に持ち込んで撮影した。なお、フウノミタケ(Phaeomarasmius laccarioides sp. nov.)は高橋春樹氏により2001年にMycoscience42(4):p347-354で新種発表されたものだが、フウの実ばかりではなく枝からも発生(j)するのを確認できた。 |
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昨日採取したササクレヒトヨタケは持ち帰ると直ちにヒダ切片を作成した。すでにヒダはかなり液化が進んでいて切り出しには難儀した。ヒダ1枚だけの切片(a)と複数のヒダを含む切片(b)を作った。というのもヒダはすぐに液化してしまうし、とてももろいので、1枚だけのヒダから薄い切片を作るのは至難の業だ。しかも、せっかく薄い切片ができてもカバーグラスの重みでつぶれてしまう。 最初ヒダの付け根部分(c)をみたのち、プレパラートに水分をたっぷり含ませて支柱としてのシスチジア(d)を観察した。次に水分を微量にして側シスチジア(e)、縁シスチジア(f)等をみた。胞子写真(g) の目盛りのスケールは1μmだ。担子器(h)は胞子を放出すると直ちに溶けてしまうので、 やや若いものしか撮影はできなかった。 ヒダの表面における担子器の分布状態をみるために、ヒダを2枚に剥がしてその表面(i)を覗いてみた。シスチジアに焦点を合わせ ると担子器がわかりにくい、担子器に焦点を合わせると手前のシスチジアに邪魔されて全体がぼけてしまう。そこで妥協の産物で両者の中間に焦点を合わせた。(i)の写真で4つ の点を持つ輪が担子器だ。もっとわかりやすくするためにフロキシンで染色(j)してみる と担子器の部分が紫色に染まった。担子器どうしがぶつかり合わないようにシスチジアがうまく間に割って入っていることがわかる。 |
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所沢の航空記念公園にはツバナシフミズキタケ(a, b)、ウスベニイタチタケ(c)、ササクレヒトヨタケ(d)が多数発生していた。ササクレヒトヨタケは老菌(e)よりも幼菌(f)の方がはるかに多いので、まだまだこれからもかなり出てきそうだ。ここのササクレヒトヨタケは背丈が30〜40cmと大きくて、柄も径30〜50mmと太いタイプが多い。ヒトヨタケ(g)、アラゲキクラゲ(h)、キクラゲ(i)、ヒメキクラゲ(j)、タマキクラゲもあちこちに多数出ている。ヒトヨタケ科(k, l)のきのこも多くの種類がみられた。ほかにもアセタケ科、キシメジ科、ヒダハタケ科のきのこの群生をみた。 | |||||||||||||
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日光で採取してきたエツキクロコップタケをミクロの目で見て楽しんだ。今回採取の個体は、サイズこそ大きかったが、いずれも完熟個体ではなかった。このため子嚢自体が全般的に未熟で成熟した胞子を抱えたものは少なかった。 コップ部分から切片(a)を切り出すと側糸と子嚢が整然と並んでいる。胞子は全般的に未熟(b)であり、小さく球形に近い楕円体をしている。だが、一部には成熟した胞子(c)も見ることができた。さらに倍率を上げて成熟した胞子(d)と側糸(e)を観察した。 柄の基部からは宿主に暗褐色の太い菌糸からなる繊維状のベールが伸びている。この繊維の一部(f)を拡大して(g)みると隔壁を持った長い細胞からなっている。さらに倍率をあげると(h)、隔壁孔が明瞭にみえたが、撮影した結果はあまり明瞭とはいえなくなってしまった。この隔壁孔を通じて細胞の内容物が流動している姿が見えた。 |
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