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ブナの倒木から発生していた数珠球のような茶褐色のきのこ(a)は、すぐには何なのかわからなかった。切断してみて(b)やっと、チャコブタケとわかった。あまり見かけない姿をしていたが、断面には明瞭な環紋があった。いくつか持ち帰ったのでこれを覗いてみた。切断面の外皮層に埋没している子嚢殼の部分から柄付針で子嚢胞子群を取り、スライドグラスにのせた(c)。メルツァーをかけて倍率を上げると子嚢先端に水色のアミロイドリングが現れた(d)。先端がアミロイド反応を示している細長い側糸のような組織は、どうやら胞子を放出して空になった子嚢のようだ。 採取したヤマブシタケからひとかけらを持ち帰ったので、それをミクロの目でみた。ハリの部分を一本とりだし横断状に切断した(e)。胞子(f)にメルツァーをたらすとたちまち綺麗な青色になった(g)。ちなみに10/9に日光で採取したサンゴハリタケの胞子(h)と見比べてみた。胞子サイズはサンゴハリタケよりもヤマブシタケの方がやや大きい。今回はクランプやら子実層内部のグロエオシスチジアの撮影はしなかった。 |
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塩原温泉の遊歩道には少ないとはいえ意外と多くのきのこが出ていた。杉植林からはスギエダタケ、スギヒラタケがあちこちでみられた。ブナの森ではウスキブナノミタケ(a, b)、シラウオタケ(c)、ヌメリツバタケモドキ(d)、チャコブタケ(e)、マメザヤタケ、チャナメツムタケ、シロナメツムタケなどもみられた。 例年ツチグリが多数でる場所も歩いても見たがタマノリイグチどころか、ツチグリそのものがほとんど出ていなかった。斜面もなぜかかなり荒れていた。 |
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昨日、今日の二日間、菌学会関東支部の観察会(a)に行ってきた。今回は塩原温泉を拠点に、初日は畜産草地研究所で、二日目は塩原自然観察路できのこ観察をした。予想通り全般的にきのこは少なかった。初日牛糞からジンガサタケ(b, c)が出ているのをみた。二日目はいろいろなきのこを観察することができたが、ムキタケ(d, e)、ヤマブシタケ(f)、ウスキブナノミタケ、ヌメリスギタケモドキなど、ブナ林でのきのこが目立った。イグチ類、テングタケ類の姿はまったくなく、ナラタケ、クリタケなどが多かった。きのこは少なかったが、楽しい観察会だった。また、久々に硬質菌の勉強をすることができた。 | |||||||
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早朝、さいたま市の公園に行ってみた。コムラサキシメジ(a)が再び顔を出してきた。ツブカラカサタケ(b)やオニタケ(c)も幼菌があちこちに見られた。キツネノタイマツ(d)もいくつも見られた。オチバタケの仲間の小さなきのこが(e)、橙色やら褐色、白褐色まで彩り豊かに多数でている。念のために4種類ほど色違いを持ち帰り胞子(f)を覗いたところ、ハナオチバタケやハリガネオチバタケではなく、すべてスジオチバタケだった。 | |||||||||||
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さいたま市でアンモニア菌の観察をしている地域があるが、そこにも寄ってみた。ワカフサタケ属(Hebeloma)のきのこが出ていた(g, h)。見たところアカヒダワカフサタケかヒメワカフサタケのような姿をしている。柄の根元はやや膨らみ、ヒダは深く湾入して(i)、隔生に近い。胞子紋は紫褐色(j)を帯びている。ヒメワカフサタケなら「砂糖を焦がしたような臭い」があるはずだが、そういった臭いがあるといえばあるし、ないといえばない。要するにはっきりしない。 切片(k)を何枚か切り出して何度か みたが、側シスチジアはとても少なく、縁シスチジア(l)と同じような姿をしている。ヒ ダ実質にはクランプがある(m)。担子器(n, o)や胞子(p)なども観察してみたが、どうやらアカヒダワカフサタケとしてよさそうだ。 今日はこれから菌学会関東支部の観察会(10/17〜10/18)向けて出発だ。塩原温泉周辺にもきのこがでているとよいのだが。パンを頬張りながらの慌しい早朝の観察だった。 |
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コウボウフデつまり弘法筆である。頭部(a)が筆の穂先?のような姿をしており、柄(b)も案外しっかりして持ちやすそうだ。「筆」なのだから文字を書けるはずだ。ということでやや小ぶりのコウボウフデ(bで上側の個体)を手にとって(c)、白い紙にカタカナでコウボウフデと書いてみた(d)。この筆、手入れが悪く穂先がボサボサで、さすがの弘法も筆を選びたくなること請け合いだ。 埼玉きのこ研究会 会報No.14 p.5(2000.3.14発行)に柴田靖氏が「胞子が球形のためか、紙へのつきは悪いですが、A4の紙にひらがな数文字位は楽に書くことができます。」と記述しているが、数文字どころか、ちょっとしたラブレターなら書けるかもしれない(昨夜試してみた?!?!?!)。 コウボウフデを訪ねて出かけた林道の足元をふとみると美しい緋色のチャワンタケ(e)があった。ヒイロチャワンタケだろう。なるべく成熟していると思えるものを数個体採取して顕微鏡で覗いた。十分熟しているとはいえず、成熟した子嚢(f)は未成熟の子嚢(g)に比べて圧倒的に少なかった。まる1日スライドグラスに伏せたまま放置してやっとのことで胞子紋が少しとれた。側糸の写真は省略して、視点を変えて覗いてみた成熟胞子の姿をとりあげた。輪郭(h)に焦点をあわせたり、表面(i)の独特の模様に焦点をあわせた後、暗視野(j)で彩り豊かな世界を楽しんだ。未成熟の胞子表面は平滑である。 |
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菌学会東北支部の奈良俊彦氏によるコウボウフデの発生調査を手伝いに福島県まで行ってきた。発生地点に番号をふった旗を立て、発生数を数えて地図上に記入していくという非常に地道で忍耐の必要な作業だ。5人で作業に従事して5時間ほど作業をした結果、600個体以上のコウボウフデの発生を確認した。さらにていねいに見れば、ゆうに1000個体はありそうだ。前年発生した残骸も多数確認することができた。詳細は奈良氏による発表を待つことにして、観察した個体の一部を紹介することにした。 松混じりの若いコナラ斜面にはかなり広い範囲に多数のコウボウフデが発生していた(a〜c)。それらの一部の根元の土をどけてみると(d, e)、汚黄色のつぼが出てきた。また地表部には現れていなかったが卵(殼皮に包まれた幼菌)がいくつも出てきた(e)。成菌を切って(f)みたり、卵(g)を切断(h)してみての観察もした。 発生地がお互いにかなり離れている群から6個体ほどをサンプルに持ち帰って検鏡した。胞子(i)表面は小さな刺が密生しており、3層の膜に包まれている。環紋弾糸(elater)の有無を確認するために6個体すべての弾糸(j)を何度も確認してみたが、今日の時点では環紋弾糸は見当たらなかった。この地域で発生するコウボウフデもまた環紋弾糸がなく偽弾糸しか持たないタイプのものなのだろうか。 今日から沢田芙美子画伯の展覧会「不思議なきのこ」が始まった。念のために再度、日程と場所を記しておこう。
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早朝撮影したのは、12日に千葉市の泉自然公園で採取したクロノボリリュウタケ(10/13a)、クロアシボソノボリリュウタケ(10/13b)、アシボソノボリリュウタケ(10/13c)のミクロの姿だ。それぞれ切片を切り出してから倍率を上げ子嚢と側糸などを見た。上からクロノボリリュウタケ、クロアシボソノボリリュウ、アシボソノボリリュウタケだ。左側から切片(a, d, i)、子嚢(b, e, j)、側糸(c, f, k)だ。 クロアシボソノボリリュウの子嚢胞子も、他のノボリリュウの仲間と同様に表面が平滑な胞子をもっているのだが、それらに混じって表面がイボ状の胞子(g, h)もみられた。わかりやすくするためにメルツァーで染色してからみた。焦点を胞子表面(g)、胞子輪郭(h)に据えて撮影した。 |
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千葉菌類談話会の第35会観察会に泉自然公園まで行ってきた。全般的にきのこの出はあまりよくなかったが、キショウゲンジ、ウラムラサキシメジ、ニオイキシメジ、ホオベニシロアシイグチなどはかなり発生してた。関心のあるものしか撮影しなかったが、クロノボリリュウタケ(a)、クロアシボソノボリリュウ(b)、アシボソノボリリュウタケ(c)、アオズキンタケ類似菌(d)、クロラッパタケ(e)、アクイロウスタケ(f)は斜面にかなりの数を見ることができた。ヤグラタケ(g)がまだ出ている、シロカノシタ(h)もちらほら見られた。 午後から行われた鑑定会(i)は本郷次雄先生による充実した説明つきだった。その後、講堂で本郷先生の「東亜と北米東部に分布するきのこ類」というテーマの講演を聴いた(j)。本郷先生の脳裏に深く焼き付けられているイグチがセイタカイグチとキイロイグチであることをはじめて知った。解散のあと、懇親会、二次会と楽しいときを過ごしているうちに、すっかり遅くなり帰宅したのはとうとう午前様になってしまった。本郷先生の元気な姿を掲載しておこう(k, l)。 「CD-ROM版日本菌学会会報とMycosceinece」の予約締め切りが2002年10月末までと残り少なくなってきた。これは菌学会創設以来の会誌46年分をCD-ROM版として一挙に復刻したもので、きのこに関心をもつすべての人にとって是非とも手元においておきたい貴重な資料といえよう。価格は10月末までなら、予約特別価格として12,000円で購入できる。その期間を過ぎると25,000円となる。なお、詳細については、以下に照会するとよいだろう。
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日光で最近採取したきのこ胞子である。ただし、(a)〜(h)までは採取した翌早朝(10/10)に検鏡/撮影したものだ。ウスキブナノミタケは本郷図鑑によると「胞子は...(中略)...若いときはやや粗面でアミロイド、成熟すれば平滑で非アミロイドとなる」との記述がある。成熟した胞子(b)は問題ないが、若い胞子(a)は表面こそ粗面だがアミロイドとはいい難い。 ところが、今朝また新たに若い菌から老菌までを選んで検鏡してみるとさらに面白い結果が出た。胞子がすっかり成長し発芽し始めているようにも見えるが、(i)〜(l)のようにいろいろなパターンが現れた。アミロイドあり、非アミロイドあり、偽アミロイドあり、胞子表面もいろいろである。 ツキヨタケの胞子(c, d)は確かに大型で厚膜で非アミロイドであることがわかる。サクラタケの胞子(e, f)はメルツァー液で染めると内部の油滴は見えなくなる。コガネタケの胞子(g)は表面が微細な点で覆われているが、輪郭に焦点をあわせて撮影したのでわかりにくい。シロナメツムタケの胞子(h)は見る方向によっては確かにソラマメ形をしてみえる。 胞子だけでは何もわからないことも多いが、時には胞子を見ただけで「××ではない」と明確に判定できることもある。同定のためというよりも、微生物であるきのこをより深く楽しむために胞子や組織を覗く、という視点もあってよいのではないかと思っている。 昨日に引き続き、ホシアンズタケとセンボンキツネノサカズキに文章を追加した。昨夜軽い酩酊状態の中で書いたので、誤字・誤変換などが残っているかもしれない。今日はこれから泉自然公園で千葉菌の採集会だ。今回は採集会よりも懇親会がメインとなりそうだ。千葉まで本郷次雄先生の出てこられるのも、今回が最後になるだろうから。 |
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日光(10/9)で観察されたきのこの続きだ。サンゴハリタケがいろいろな姿で出ていた。先端がピンク色をしたもの(a)やヤマブシタケと間違えそうな姿をしたものがあった。遠慮しがちに採取したのだが、それでもこの日の収穫は両手で持って(b)3杯分あった。猫の舌(ニカワハリタケ)が立ち枯れの樹に縦にビッシリついていた。あまり見たことのない光景だった。チャナメツムタケばかりではなく、キナメツムタケ(d)、サクラタケ(e)も多数見られた。 ブナの樹から大きな白いきのこ(f)がでていた。遠くから見たときにはブナシメジかシロタモギタケかと思ったのだが、近寄ってみるとどちらとも違っていた。かなり肉厚のしっかりしたきのこだ。その周囲は一面ウスキブナノミタケ(g, h)の大群落で足の踏み場もないほどだった。相変わらず調子の悪いカメラを使っているので、60枚ほど撮ったうちまともにピントの合っているものは2枚ほどしかなかった。いまや固定焦点の機能も使えない。 ヒグマアミガサタケ(トビイロノボリリュウタケ)(i)やノボリリュウタケ(j)も多数集まると見事だった。ツキヨタケ(k)もそろそろおしまいだろう。2枚ほどツキヨタケを持ち帰ったので自宅の押入れでほのかな発光を楽しんだ。 この日の目的のひとつはコガネタケの菌核(l)の確認だった。いくつもの菌核を調べてみたが、残念ながらニオイオオタマシメジの子実体がでているものは無かった。数年前の見事な子実体を再び見られるのはいつになるのだろうか。この日の日光で出会ったり撮影したきのこは、他にも10数種類に上った 先日「キノコのフォトアルバム」から、すべてのきのこのトップページの駄文を削除したので、あらためて少しずつ記述を加える作業を開始した。まず最初にコナガエノアカカゴタケとウスキブナノミタケから開始した。取り扱い種が今や500種を超えてしまったので、一日に1件か2件順調に記述できたとしても、すべてを記述し終わるのはかなり先になるだろう。だいたいこの秋の忙しいシーズンにそんな悠長なことはしていられない。 |
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