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昨日早朝、というよりまだ暗いam4:30頃から6:00頃まで三芳町、大井町、川越市の保護林を回ってきた。先週土曜日の雨でいくらかキノコも発生しているかと思ったのだが、ほとんどキノコの姿は見られなかった。18日の雨の効果が出るのは土日あたりからだろうか。川越の保護林で見たのはマツオウジの幼菌(a, b)やら変形菌(c)、干からびたベニタケ科のきのこ、キクラゲばかりだった。他にはスエヒロタケ、クジラタケ、チャウロコタケなどの硬いキノコを4,5種類見かけただけだった。あまりにキノコが少ないのでam7:00前には帰宅していた。 | ||||
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早朝の見沼地区にでるのはヒトヨタケ科のきのこばかりではない。ツブエノシメジ(a)、ツブカラカサタケ(b)、ハタケキノコ(c)、ナヨタケ属(d)、ヒビワレシロハツ?(e)、ハタケチャダイゴケ(f)などの常連は今朝も出ている。他にもツマミタケ、キツネノタイマツ、サンコタケ、キクラゲ、アラゲキクラゲ、アミスギタケ、スエヒロタケなどが見られた。 ところで、ヒトヨタケの採取について、青木実氏が『日本のキノコ No.1』(1974)の中で以下のように記述されている。用語や内容はやや古いが、基本は今も同じだろう。 [ヒトヨタケ属研究の要点] |
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先週の土曜日にかなり雨が降ったせいか、昨日の見沼地区ではウッドチップから多量・多種のヒトヨタケ科のきのこがあちこちで一面に発生(6/17f)した。これらのきのこは夜明けから数時間の命で、陽が昇るとたちまち萎れたり溶けて姿を隠してしまう。am8:00にもなるとただ、そこにきのこが生えていたらしい痕跡をみるばかりとなってしまう。昼近くになると、もともとそこには何も無かったかのようにただチップが広がるばかりとなってしまう。今回はいくつか傘表面を真上方向から撮影してみた。 ビロードヒトヨタケ(a, g)、ザラエノヒトヨタケ(b, h)、ネナガノヒトヨタケ(c, i)、ワタヒトヨタケ(d, j)、クズヒトヨタケ(e, k)などが群れの中心メンバーだが、赤みがかった菌(f, l)やら、橙色の菌(ma)などヒトヨタケ科と思われる不明種も多数出ている。 |
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見沼に出るヒトヨタケの仲間にちょっと異色のきのこ(ma〜mc)がある。その姿が非常に清楚で美しいからだろうか、「きのこ屋」さんのトップページを飾っている。 このきのこ(ma)は見沼地区では珍しくも何ともないのだが、未だにその素性がよくわかって いない。さる6月17日早朝も数十株が発生してその美しい姿を見せていた。形はビロード ヒトヨタケによく似ているが、色が鮮やかな橙色から淡橙色をしておりヒダの端にいたると白色となる。傘表面(mb)には中央付近に短い毛が生えている。ヒダ(mc)の姿はビロードヒトヨタケとほとんど同じだ。ただ、全般的にビロードヒトヨタケよりも繊細でゼラチン的質感がより強い。そして、液化こそしないがビロードヒトヨタケよりも短時間で干からびてしまう。さらに胞子紋がなかなかうまくとれない。ちょっと伏せておいただけでも、すぐに濾紙やらスライドグラスにくっついてしまうのだ。 生状態からヒダ切片(md)を切り出すのは思いの外難しく、いまだうまくいったためしがない。ヒダ表面(me)の組織は担子器がぶつかり合わないようにうまくできている。傘表面中央部にはわずかに毛(mf)がある。担子器(mg, mh)や胞子(mi)の姿はビロードヒトヨタケと変わらない。胞子サイズは11〜13×7〜8μm、発芽孔が確認できるものもある。 |
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昨日のイネ科植物から生えるきのこの続きだ。傘表皮の縦断面(a, b)を見ると細長い細胞が縦に連なったり、縦横に入り組んでいる。傘表皮を剥がしたもの(c)を見ても結果は同じだった。傘表皮の組織にも傘肉やヒダの組織、さらには柄の組織にもクランプ(d, e)が多数みられる。 「クランプが無い」と判定するためには、ヒダばかりでなく傘やら柄など、あちこちの組織から何度も何度も切片を切り出して、視野の中をウロウロしながら探し回らねばならないので骨が折れるが、「クランプがある」という判定は実に楽でよい。傘でも肉でも柄でも、それらのどこか数ヵ所にクランプをみつけるだけでよいのだから。 昨日書き漏らしたが、柄は中実でしっかりしている。そして基部はイネ科植物の組織の中にしっかりと入り込んでいて、まるでその一部であるかのようにみえる。また、今回は試薬を使っての呈色反応試験はやっていない。 今朝の見沼はウッドチップからヒトヨタケ科のきのこが一面に発生(f)してみごとだった。足の踏み場も無いほどの大量発生だが、ビロードヒトヨタケを主体として、クズヒトヨタケ、ザラエノヒトヨタケなどがみられた。 |
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昨日は明け方からバケツをひっくり返したような激しい雨だった。そんな中を千葉県の内房に向かった。富津市で浜を観察した後、外房に移り一ノ宮、白子、蓮沼と浜辺を観察して歩いた。最後に茨城県の大竹海岸を歩いて家路についた。どしゃ降りの雨が降ったにもかかわらず、砂地を2〜3cmほど掘ると地下はカラカラに乾いていた。 九十九里から鹿島灘にかけての浜辺は、イネ科植物の根やら葉からでる奇妙なきのこ(a〜f)が群生していた。これは「今日の雑記 5/15」で取り上げたものと同じだが、ハマニンニクばかりではなく、コウボウムギ(b)やらコウボウシバなどの根元からもでていた。若い菌(a, b)、成菌(c, d)、老菌(e)がすべて出そろっていて、場所によっては踏みつぶさずに歩くのが困難なほどの大量発生だ。 砂から掘り出してみると(d)、先の観察時と同じで、宿主のイネ科植物から支枝がでてその先端がきのこになっているかのような姿をしている。数は少ないが地中のイネ科植物の枯葉や枯枝などからでているものもある。前回の観察時に担子器やら胞子がほとんど見られなかったのはまだ幼菌だったからだが、成菌の傘径は2〜3.5cmほどありヒダ(f)は疎で、傘にはヌメリなどは無く、色も薄紫から紫褐色、淡褐色で一見するとキツネタケ属(Laccaria sp.)を思わせる。比較的短時間でたっぷりとれた胞子紋(g)は白色だった。 切片(h)を切り出して倍率を上げ(i)てみるが、シスチジアらしき物が見つからない。担子器(j)と似たような形の棍棒状の組織(k)は多数ある。シスチジアの様にもみえ、担子柄のとれた担子器のようにもみえる。いろいろな成菌や老菌を見ても同じだった。明瞭に形の異なるシスチジアは見つからなかった。胞子(l)をメルツァーで染めるとどうやら表面だけが黄褐色に染まるようだ。胞子サイズは10〜14.5×7〜9.5μmほどだ。 |
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久しぶりに見沼地区に行ってみた。ここでもカラカラ天気の影響できのこの姿は少ない。特に腹菌類がほとんどみられなかった。例年より一ヶ月遅れでツブカラカサタケ(a〜c)が出てきた。ヒダ(c)を見るとナメクジが食事中だった。オキナタケ(d)、ハタケキノコ(e)は次々に出ていたらしい。ハタケキノコによくにた菌(f)がそこここで大発生しているのだが、乾燥気味のものが多い。ヒトヨタケ科のきのこはわずかの雨でもすぐに大量に顔をだす。ビロードヒトヨタケ(g)、ワタヒトヨタケ(h)、ザラエノヒトヨタケ(i)、ネナガノヒトヨタケ、ウシグソヒトヨタケ、クズヒトヨタケは相変わらず見られる。ハタケチャダイゴケ(j)は至るところに出ている。例年に比較すると、総じてきのこの種類・量ともにとても少ない。やはり雨の少なさがたたっているようだ。 | |||||||||||
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昨日用事があって川崎市まで出向いたのでついでに付近の森を歩いたが、やはりここでもキノコの姿は非常に薄かった。フウの木の実からはフウノミタケ(a, b)やら、実から出るXylariaいわばフウノホソツクシタケ(c, d)がまだ多数見られた。このXylariaを指でつつくと一面に胞子をまき散らした。柵からはツチヒラタケ(e)がちらほらと出ていた。わずかの雨だったにもかかわらずキクラゲ(f)があちこちにみずみずしい姿を見せていた。 いつぞや日光でニカワウロコタケをキクラゲと間違えて採取しているグループに出会ったが、このキクラゲを見ていると確かによく似ている。乾燥するとペチャンコになり、雨が降ると急にブヨブヨと厚みを増す。大きさこそ随分違うが、姿だけからみるとニカワウロコタケは大型キクラゲと間違えても不思議はないような姿をしている。 |
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ふだん切片の作成には、たいてい発泡スチロール製ピスと両刃カミソリを4つに割って使っている(a)。ピスとしてはニワトコ(b の左上)やヤマブキ(b の右下)の髄が最適なのだが、最近はこれがなかなか入手しにくい。そこで発砲スチロール(b の中)を使う頻度が高くなった。これなら1m長のものが100円ほどでいつでも入手できるのでいくらでも使える。ただ、薄片を切り出したときにクルクルと丸まってしまうという欠点がある。 ここ一番という様なときはしばしば簡易ミクロトーム(c, d)を使っている。写真はかつて日野市のI氏が精密測定機器のマイクロメータをベース制作されたもので、仲間内では通称「I氏の秘密兵器」として通っている。多少のコツがいるが比較的楽に薄片を切り出すことができる優れものだ。「I氏の秘密兵器」を作るのは大変だが、使い捨て注射器を利用したものなら簡単に作れる。「簡易ミクロトームの製作と活用」にその作り方が詳細に紹介されている。おまけに注射器の内径とピッタリの発砲スチロールも販売されている。手作業だけで薄片を作るのが難しいと思ったら試してみる価値がありそうだ。 |
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待望の雨がやっと降り出したが、このところの長期にわたる雨不足のせいかきのこの姿が全くないので、今朝はミクロ観察をして楽しんだ。まず先入観抜きにミクロの観察をして、それからパズルを解くように検索表をたどっていった。 日光で先日採取してきたチャワンタケはいくつかの種類があったが、昨日とはまた別の一つ(a)を顕微鏡で観察した。このチャワンタケはハルニレから発生していたものだ。切片(b)を切り出して、すぐにメルツァーで染色(c)してみた。胞子嚢先端が青く染まり、胞子の表面には小さなイボ状の突起が見える。さらに拡大する(d)とより明瞭にわかる。側糸(e)は特に特徴はない。胞子サイズは12〜15×6.5〜8.5μm。Peziza echinosporaのように見えるが、樹上からも落葉からも発生しているのが気になる。 同じく日光で採取したミズベノニセズキンタケと思える菌(f)から切片(g)切り出して、メルツァーで染色(h)してみると、心なしか子嚢先端がわずかに薄青く染まっている。もしミズベノニセズキンタケなら青くならないはずだと思って、胞子(i)をみたり、側糸(j)をみるが、やはりミズベノニセズキンタケそのものに見える。胞子サイズは11〜13×4〜5μmほどで、子嚢の中に2列に並んでおさまっている。 |
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6月9日に日光で採取してきたチャワンタケの一つ(f)を顕微鏡で観察した。お茶碗(子嚢盤)の内側に息を強く吹きかけると胞子が舞うのを確認してから切片(a)を切り出した。未熟な若い個体だと胞子嚢や胞子が十分に育っておらず、別の種に見誤るおそれがあるからだ。早速メルツァーで染色してみると(b)、胞子嚢先端(c)が綺麗に青く染まった。胞子をすっかり放出し終わって先端の蓋が開いたもの(d)も見える。側糸(e)は思っていたよりも少なかった。胞子のサイズは18〜21×10〜12μmほどで表面は平滑だった。これだけからは断定できないが、ほぼオオチャワンタケとして扱ってもよさそうだ。 このチャワンタケは熱を通すと脆さはなくなり、ワサビ醤油で食べるとしっかりした歯触りを楽しめた。ミクロ観察に使った完熟個体はさすがに食べる気が起きなかった。 |
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